「MINAMATA ミナマタ」(9/23公開)


ジョニー・デップが水俣病を撮り続けたアメリカ人カメラマンの後半生を
演じると知り、最初は「なぜ今『水俣病』を取り上げるんだろう。まだ苦しんで
いる方もいるのによく日本で上映できるな。日本ディスってんのか」と、
観る気が無かったのですが…。母が珍しく上映前から「観たい」と。
熊本出身で水俣病をきっと間近に感じて生きてきたからかも。そんな母を持つ私ですが、水俣病の事は小学校の教科書で四日市ぜんそく等と一緒に公害病の
一つとして習った程度で詳しいことは何も分かっていなかった。

だんだん目を背けず、知りたい、知らなきゃって思うようになりました。



過去の栄光にすがり、自身は落ちぶれた酒浸りの日々を送っていた写真家
ユージン・スミス(ジョニー・デップ)。そこにアイリーン(美波)が訪れ、水俣病の

取材を持ち掛けます。まず、ジョニー・デップの演技の上手さよ。
オジサンというよりお爺ちゃん寄りの風貌で動きや話し方など、
私はユージン・スミスを知らないけれど、きっとこんな人だったんだろうと
すぐにストーリーに引き込まれました。水俣に撮影に来てたんだよね?と思ったら

撮影地はなんとセルビアという衝撃。

ユージンは壮絶な沖縄戦の従軍カメラマンもしていて、時々フラッシュバックするんだけど、

それでもまた日本に来て撮影しようと思う、気持ちが強い人だなと感じた。



ユージンを支えるアイリーンも水俣病撮影に絶対不可欠な人。
彼女がいなかったら水俣まで来なかったかもしれないし、撮影も
こんなに上手く進まなかったと思う。アイリーンもただ彼に付いて
通訳するだけではなく、かなり年上なのに言いたいことはハッキリ言う部分とか、
性格が合ったんだと思う。アイリーン役の美波さん。鑑賞中も誰だろう?
観たことあるような気もするけれど…日本ではあまり知られていないけれど
ハリウッドで活躍されている方かな?と思っていたらドラマ「有閑倶楽部」の
悠理役でした!だから見たことある気がしたのね。

 




カメラのシャッターを押すシーンやフィルムを現像するシーンが多いのですが、
今はスマホにカメラがついているから、何でもかんでも気軽に写してるよなー。
昔は1枚1枚を大切に写していた。現像も手作業で、一つ一つを気持ちを込めて
行えば、想像以上の良い写真が生まれてくる。もっと写真を撮る意味とか、
1枚に対する想いとか大切にしないと、物事の本質って見えてこないように
感じました。


そして報道について。
ちょうど今、総裁選や小室圭さんの話題でいっぱいですが(笑)
正しく情報を伝える大切さを感じました。公害の原因を作った会社が
最初、お金でユージンを買収しようとしました。きっと、そーゆー「見えない力」で

真実が歪められていること、きっと今もたくさんあると思います。


「ひどい」「可哀想」なんかの言葉では済ませられないほど恐ろしい公害。
なのに水俣病のことを正確に語れる人はどれくらいいるだろう?
教科書でも紹介程度。もう終わったこと、過去のことと隠せるものなら
隠しておきたい国の思惑もあったんじゃないかなーと。
それでもこの映画の制作に待ったをかけることなく、きちんとメジャーな
映画館で上映している日本は自由で正しい国だと、私は久しぶりにちょっと
日本見直したゼ。




エンドロールでは、世界中の公害が紹介されていて、水俣病の教訓って何も
活かされていないと悲しくなります。人間の利益のために地球を汚しては
いけないし、人間が犠牲になってもいけない。そのためには、世界中の1人でも
多くの人がこの映画を見て、公害の恐ろしさを知り、公害を生み出さない社会を
作っていくことの大切さを感じることだと思いました。
本当に観て良かった。ただ1つ…真田広之や浅野忠信など熊本弁がもう一歩だった
のが悔やまれる。ウチの母に方言指導入ってほしかったです(笑)

(一部写真はeiga.comさんよりお借りしました)

 

水俣病とユージン・スミスの本、写真集。