11月18日(土)~11月24(金)ジョン・カーニー監督作品
『シング・ストリート 未来へのうた』『はじまりのうた』
【映画から生まれるファッション】
音楽とファッション。
この二つは、切っても切れない縁で繋がれているように思えます。アーティストたちは、自分を表現するための一つとして衣装を身に着け、化粧をします。音楽からファッションが生まれたように、映画がファッションを生む、ということも考えられますよね。登場人物たちが着ている衣装は、映画全体のビジュアルを決めてしまうといっても大げさではないほど、その作品を印象付ける存在になっているかと思います。例えば、音楽とファッション好きにはたまらない『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(15’)』や、ガーリーレトロな『タイピスト(13’)』、『(500)日のサマー(10’)』、70年代ファッションとロック『あの頃、ペニーレインと(01’)』、ベリーショートのボーイッシュファッション『永遠の僕たち(11’)』。今回上映する、ジョン・カー二ー監督作品の『はじまりのうた』、『シング・ストリート 未来へのうた』も、ファッションが印象的な青春映画です。
◆ 80年代ニューロマンティック×青春『シング・ストリート 未来へのうた』
舞台は1980年代のアイルランド・ダブリン。不況でお金がなく、しかも田舎の町では流行の服を手に入れられなかった若者たちは、チャリティーのお店や古着屋に足を運んでリメイクを施し、それに親や兄妹から借りた服を組み合わせ、現代風にアレンジしていたそうです。1970年代に流行したスタイルは、フリンジやスエード生地、レースなどを取り入れた「ボヘミアンスタイル」と、それまでは作業着としての扱いだった「ジーンズ」ファッションです。70年代の多様化した自由なファッションから、さらにたくさんのスタイルが誕生したのが、『シング・ストリート 未来へのうた』の80年代ファッションの特色です。主人公たちが結成したバンド“シングストリート”は、“Duran Duran”や“Culture Club”などのバンドに言われる“ニューロマンティック系”のビジュアルです。ニューロマンティック系の音楽性は様々ですが、初期はヒラヒラした中世ヨーロッパ的な衣装を身につけたり、派手な化粧をするなど、ビジュアルに関してはどのバンドも似ています。作中で主人公たちが衣装として着ている服は日常着ではありませんが、日本では“竹の子族”が流行るなど、各国でファッションや文化が花開いた時代とも言えます。
◆現代NYポップ×日常『はじまりのうた』
キーラ・ナイトレイのファッションは、シンプルでナチュラルな印象。全身ガチガチにキメるのではなく、“抜け感”のあるスタイル。ニューヨークらしさと華奢な女性らしさが出ています。そして、時代に流されることなく、自分の着たいもの・似合うものを選んでいるのがわかります。そんなこともあり、公開からじわじわと時間をかけて人気を得たこちらの作品は、女性からの支持も高かったようです。赤や淡い色合いのビンテージ風ワンピースを着たり、パンツスタイルにぺたんこ靴を合わせ、ざっくりと髪を結んだ彼女がギターを持って街頭で歌う姿に「自分もこうなったらいいな、こうなりたいな」と、憧れを抱く人も多かったのではないでしょうか。日常に取り入れることを考えると、『はじまりのうた』のキーラの服装は簡単に真似できそうです。ただこれからの季節には無理そうなので(作中は全て夏服!)、極寒になるニューヨークの冬で、“冬バージョン”のはじまりのうたを観てみたいですね!
一見違うはあれど、この二つの作品に登場するファッションは、古着屋やリサイクルショップに行けば比較的手に入れやすく、アレンジすればすぐ日常に取り入れられるところが共通しています。ファッションは巡るものですので、○○年代ファッションが流行る時代がまた来るかもしれません。自分のポリシーを貫くもよし、流行に乗るもよし。ファッションを自由に楽しんでください!
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