去る、6月25日(日)、『美しい星』の吉田大八監督と、朴木浩美プロデューサーが来館され、ティーチインイベントが開催されました。
お客様からの質問に、吉田監督はひとつひとつ丁寧に答えてくださり、映画『美しい星』をより楽しめる貴重なイベントとなりました。
30分間があっという間に過ぎた濃厚なティーチインでした。今回は、吉田監督と朴木プロデューサーのお話と、質疑応答から3つを取り上げ、ティーチインの模様をお届けいたします!
『美しい星』ティーチイン・プチレポート
―― 監督は、塚口サンサン劇場とご縁があったそうですが。
吉田監督:『桐島、部活やめるってよ』という映画のときに呼んで頂いたんですけど、僕の都合がつかなかったので、佐藤貴博プロデューサー(『桐島、部活やめるってよ』の総合プロデューサー)が代わりに出てくださったんですね。それで、塚口サンサン劇場がいかに盛り上がったかっていうのを後ですごく自慢されたので、なんか悔しいなと思っていたんです(笑)だから今回は“あの塚口サンサン劇場か~”ということで、わくわくして来ました。
―― 『美しい星』の製作を決めたのは、何年くらい前ですか?
朴木プロデューサー:2015年の頭ですね。吉田監督と何か作りたいという話しをしていて、そのときに“『美しい星』ならやるよ”と。それが始まりでした。
吉田監督:そんな偉そうな言い方してないよ(笑)
―― それでは、限られた時間ですが、せっかくですので監督に直撃インタビューしていただけたらと思います。
Q:吉田監督がずっと映画化したかった『美しい星』。製作許可が出た時はどんな気持ちでしたか?
吉田監督:正直、びっくりしたんです。僕は何回も、事あるごとに“『美しい星』をやりたい”って言ってたんです。1本目を撮って2本目こそは、と思って関係者の方に相談してもやっぱり駄目で。開かないとわかっている扉のドアノブを、念のためにガチャガチャ回してる感じでした。朴木さんともう一人、僕がずっと一緒にやっている鈴木ゆたかさんというプロデューサーがいて、彼から久しぶりに声がかかって、そのときに“『美しい星』はどうですか?”と、ドア閉まってるんだろうなあと思いながら、もう一回聞いてみたんですね。そしたら朴木さんと鈴木さんが話をして、“やれることになりそうだ”という返事があって、びっくりしました。その頃、既に僕のスケジュールが埋まっていたり、準備ができていなかったり、それに3.11があって、この映画に対する自分の中の考えが変わっていたりもしたので……。でも、“やりたいと言い続けてきた映画を撮らずに死ぬのは嫌だ”という気持ちが勝って、“やらせて欲しい”と返事をしたのは覚えています。
Q:原作では、「核戦争の恐怖」というものがテーマになっていたと思います。そして映画では、「環境問題」。監督が映画にする際、最初に構想された時は、それ以外の選択肢はありましたか?
吉田監督:3.11があってから、原子力発電所の問題を据えて、劇中で3.11が起きるという設定で一度脚本を書いてみたんです。だけど原作の、核兵器の恐怖というものが世界中で意識されていた時代に、日本からアメリカとソ連の核兵器問題を見ている感覚と、今僕らが、例えば原発が自分たちの傍で爆発してしまいそうな緊張感の中に生きているという感覚が、近いようで意外と遠いというのが正直な感想で。
原発は選挙や投票行動である程度の意思表示ができるけど、宇宙人目線で地球レベルの問題を考えていると、今、日本で具体的な問題になっている原発を扱うのは距離が近すぎる。だから気候変動かな、と。3.11が起こる前に、気候変動で企画書を出したことはあったんですけど、そこに戻ったというか。でも、自分の意識もお客さんの意識も、3.11が起こる前に戻すことはできないし、なかったことにはできないので、最初の構想の原発問題を残している部分もありますけど、直接的なモチーフとして核を扱うのはやめました。
―― プロデューサーの意向はなく、監督の意向で製作は進行したんですか?
朴木プロデューサー:そうですね。話し合うときもあるんですけど、今回は監督と原作との30年来のご縁がありましたし、私自身が監督から、“『美しい星』を現代でやりたい”と言われたときに、“それが見たい”と思ったんですね。そこからブレないように、できるだけ監督の思いを、というのはありました。
吉田監督:舞台を現代に移す、というのは結構大きかったですね。原作の1962年を舞台に作るというのも映画としてはアリなんですけど、原作は同時代の物語を描いているので、やっぱり2017年の同時代の物語を描くという、そこに迷いはなかったです。
Q:『美しい星』はSFですが、圧倒的なSF的表現の後に、読者や観客を現実に戻す表現があって、そこにぐっときたのですが。
吉田監督:多分、そういう表現が好きなんだと思います。“こうすると感動するだろう”というよりは、ガーッとSF的表現を突っ走ってやった後、例えば、火星人や金星人として目覚めた後でも、家に帰ったら靴を脱いでお茶を飲んでいたり、親子で会話したり。宇宙人になったのに地球人としての生活を守っている。原作でもそういう場面はあるんですけど、地球人としてのごく普通の感情と宇宙人として覚醒した突飛な自覚が同居しているというめちゃくちゃな感じが好きなんだと思います。だから、それで感動するのも相当変態なんですけど(笑)、そこで恐らくは感情が揺さぶられるんだと思います。どっちかだけ、ということじゃなく。冷めてると言っていいのかわからないけど、熱いところとクールなところ、視点を2つ持って感情が作られるというのは、この映画に限らず僕は好きなんです。この映画を作って思ったんですが、『美しい星』でやりたいと思っていたことを、他の映画でちょいちょいやっていたというのは、作り終えてから気づきましたね。■
まだまだ話し足りないといった雰囲気の吉田監督でしたが、これから京都にある別の劇場での舞台挨拶に向かわなくてはならないということで、残念ながらここでお時間に。吉田監督、朴木プロデューサー、そして司会進行を務めてくださった配給会社GAGAの辻さん、お忙しい中、ありがとうございました。
ティーチインの後は、吉田監督のサイン入りプレスシートが当たる抽選会が行われました。
1階4番シアター横の鉄扉には、吉田監督と朴木プロデューサーに書いて頂いたサインと、地下2階には吉田監督のサイン入りポスターやパンフレットが展示された『美しい星』コーナーがございます!こちらもぜひ探してみてくださいね。
映画『美しい星』は、6月30日(金)までの上映です。
美しい脚本と美しい映像、美しい音楽、たくさんの〈美しい〉が溢れています。ぜひとも映画館のスクリーンで味わってください
(映写スタッフF)
■ 上映情報 ■
『美しい星』
6月24日(土)~6月30日(金)1週間限定上映
18:00~20:10 1日1回上映
・『美しい星』公式サイト
http://gaga.ne.jp/hoshi/
(C)2017「美しい星」製作委員会