皆様は『アンナ・カレーニナ』はご覧になられましたか?

私はジョー・ライト監督が大好きなので、
『プライドと偏見』と『つぐない』で
キーラ・ナイトレイ&ジョー・ライト特集を!!!と懇願しました。
(『プライドと偏見』はなかったようです・・・残念(>_<))
なんでこんなに好きかと申しますと、
監督の映画は、映画を良く見せる技法を使って、
丁寧に1シーン1シーン撮影されています。
これがすごく美しい映像に繋がります。
今から、この「映画を良く見せる技法」についてお話させていただきたいのですが、
映画を見る基本は「観客の好きなように見る」だと私は思うので、
これは一方向からの見方だと思ってください。
私もかなり端折ってライトな感じで書きます。
私の説明に当てはまらない映画もたくさんあると思いますので
軽~く聞き流す感じでお読み下さい。
前置きが長くなりましたが、よろしくお付き合い下さい。
映画で「落ちる」「高さ」「奥行き」は、意図しないと表現できません。
スクリーンは平面で、高さより横の方が長いので、
横移動のシーンの方が多いと思います。
(とりあえず「落ちる」と「高さ」は置いておいて)
奥行きを出そうとすると距離感を出す必要があります。、
カットしたシーンを挟むと距離感が伝わりにくいので
長回しと呼ばれる、一つのカメラでカット無しに撮影されます。
でもこの長回しで、遠くから長々と撮影しても
観客は楽しくない・・・というデメリットがあります。
ジョー・ライト監督はその「奥行きのある画」を徹底して長回しで撮影します。
観客を飽きさせないように、様々な動きを取り入れて、
奥行きを出し、画面を際立たせます。
『アンナ・カレーニナ』では、登場人物が舞台から階段、
舞台裏と動きまわりシーンの最後で壁を作り部屋を作ります。
舞台装置を映画に取り入れるというより
「映画技法を舞台に使う」感じを受けました。
そう思うと、まるで座席が動いて演者を追いかけているような、
観客自身の周りで物語が展開しているような気になります。
舞踏会のシーンでも密集した人と人の間をカメラが潜り抜けたり、
クルクルとカメラアングルが回るので、
映画に没頭するとその場にいるかのような気分になります。
『つぐない』でもこの動きのある長回しが多用されています。
特に戦場の海岸シーンのものすごく長---い長回しは有名ですが、
それ以外にも単発で入る長回しも、動きを重視していて飽きさせません。
『プライドと偏見』では映画の冒頭で、カメラは主人公を追いかけていますが、家の側に来るとカメラは勝手口から家の中へ。主人公は庭をぐるっとまわって玄関を目指します。カメラは家の中にいる登場人物をとらえつつ、窓から外にいる主人公も映します。そうして玄関から入る主人公をとらえて1シーン。これを見たときは1シーンで無言で登場人物紹介をした!と興奮してしまいました(笑)
また、この監督のこだわりは「陽光」と「影」です。
映画って光と影なんだな~と改めて思うほどに、光も影も美しく表現します。
陽光に照らされると必ず影ができます。
女優をその曖昧な光の中に置くことで、感情の揺らめきや危うさを表現していると思います。
その昔、映画で女優の顔に影を映すなんてありえない!という時代があったそうです。
そんな時、リドリー・スコット監督は『エイリアン』でシガニー・ウィーバーの顔に影を作って、
宇宙船の陰鬱さ、陰に何か潜んでいるような恐怖感を演出してセンセーションを巻き起こしたらしいです(大学の授業で聞いた話なのでちょっとあやふやです・・・。)
そして対比表現も多用しています。
『アンナ・カレーニナ』では、アンナは社交界という閉じた世界で生きている感じを出すため、キーラ・ナイトレイを陽光で輝かせず、ほとんど室内の照明で照らし出し、舞台から屋外へ出ることはありません。
原作でも対比されていた、田舎地主のリーヴィンは社交界から出る(舞台から降りる)と
自然の中で生きていきます。
『つぐない』でも、前半は陽光に包まれ色味もあふれていますが、後半は重くどんよりした雰囲気になります。
まだジョー・ライト監督のこだわりはあります。
『アンナ・カレーニナ』の舞踏会のシーンで、アンナがヴロンスキーとダンスをするとき、キティの相手役がコロコロ変わります。黒い服・白い服・また黒い服・・・。これは数曲のダンスを連続でアンナとヴロンスキーが踊ったという意味だと思われます。舞踏会で2回連続で踊るって「あなたを気に入っています」ということなので、周りの白い目やざわめきが間に挿入されます。
でもこれに気が付かない方が映画を楽しめるような気がしないでもありません・・・。私は黒い服の人と白い服の人が別人か、そちらに気を取られすぎてしまいましたので・・・。
またもやこれだけ長々と付き合わせたのに、こんなことをいうのはアレなんですが・・・。
「技法を追いかけて見ると、映画の内容がわからなくなる」ことがあるので(多々あったので)、
「あ、これかな~」ぐらい気にかけてきただけたら幸いです。
「それは違うと思うな~」って方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントをお寄せ下さい!
こんだけ書きながら、「違うかもしれない・・・。」と不安でもあります!!
人と話していて気が付くことの方が多かったりするので・・
いつか、鑑賞したお客様たちと映画座談会みたいな
「あーでもない、こーでもない」論争が
サンサン劇場でできたら楽しいのにな~とか思います。
映画の技法はまだまだたくさんあります。
私が知っているものだけでも、また機会があればちょっとずつ
書かせていただきたいと思います。
お付き合いいただきありがとうございました!
『アンナ・カレーニナ』は6月28日までの上映です。
『つぐない』は6月29日から7月5日までの1週間だけの上映です。
ぜひご鑑賞下さい♪