小唄備忘録500番―その173「筆のかさ」 | 江戸小唄と三味線のブログ

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真夏に海辺の家で、筆のかさ(鞘サヤ)を蚊遣火に焚いて独り待つ女心を唄った小唄です。

 

冒頭に尼芳樹の俳句を採り入れています。

 

★お聴き頂けます⇒

 

 

解説:「筆のかさ」は筆にかぶせる竹の鞘で、たまったものを干し蜜柑と一緒に焚いて蚊遣火としました。

尼芳樹の俳句は「筆のかさ 焚いて待つ夜の 蚊遣かな」(安永三年)です。

 

「女波男波」は、大きく寄せる男波の前に低く打ち寄せる女波で絡み合い、夫婦の睦み事を暗示しています。

 

「寝かさぬ時を思いやる」は、かつての甘美な情景を幻想しているようです。

 

 

蚊遣火、先人は、自然をうまく活かして生活の知恵にしていますね。波を男女の仲に見立てるのも、現代人の感覚では出来ません。じっと待つ身の女もいなくなったようですが、待たせるようなイイ男も今いなくなったような・・・。


明治三十年頃 三世清元斎兵衛作曲。別に二世清元斎兵衛作曲・替え手は三世作曲という説があります。

 

小唄備忘録500番―その173「筆のかさ」(2分35秒)

 

画は、鏑木清方「夏の宵」です。