以前検討してきた、

不貞行為の損害賠償請求の裁判例に、面白いものがあります。

 

肉体関係はなく、旅行にいっただけの事案をご紹介します。

10万円の損害賠償義務が認められた事案です。

判示内容を見てみましょう。

 

ところで、第三者が婚姻当事者の一方と緊密な関係になったことによって、他方の配偶者が精神的苦痛を被った場合について、次の最高裁判所の判例がある。「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁)。

 

ここまでは、すでに検討してきた最高裁判例でした。

http://ameblo.jp/t-saito-leo/entry-12278194264.html

 

今日はここからです。

 

 そこで、この判例にしたがって考察すると、被告とAとの間に肉体関係があったことを認めるに足りる証拠はないが、被告とAとの交際の程度は、数万円もするプレゼントを交換するとか、2人だけで大阪まで旅行するなど、思慮分別の十分であるべき年齢及び社会的地位にある男女の交際としては、明らかに社会的妥当性の範囲を逸脱するものであると言わざるを得ず、恋愛感情の吐露と見られる手紙を読んだ原告が、被告とAとの不倫を疑ったことは無理からぬところである。被告のこれらの行為が、原告とAとの夫婦生活の平穏を害し原告に精神的苦痛を与えたことは明白であるから、被告は原告に対し不法行為責任を免れるものではない。
  しかしながら、本来、夫婦は互いに独立した人格であって、平穏な夫婦生活は夫婦相互の自発的な意思と協力によって維持されるべきものであるから、不倫の問題も、基本的には原告とAとの夫婦間の問題として処理すべきものと考えられる。したがって、被告とAとの交際が上記の程度であって、その期間も約半年に過ぎないこと、被告もAも○○委員を辞任するという一種の社会的制裁を受けていること、原告とAとの婚姻関係は最終的には破綻することなく維持されていること等の事情を勘案すると、本件において、被告の行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては、10万円が相当と考えられる

 

不法行為の成立は免れないが、最終的な着地点は10万円と判断されていますね。

 

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弁護士 齋 藤 健 博

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