先日、自分が制作・運営しているサークルのホームページにブログを導入してみた。反応は非常に鈍く、”掲示板とどう違うのか”という意見が多くあがった。考えてみたら、自分もウェブログ、略してブログという存在がいまいち理解していなかった。
自分は、1998年ごろから、インターネットに触れるようになり、1999年後半から自分のホームページを作るようになった、そして、2000年11月からウェブ上で日記を書くようになり、2004年11月からウェブログを使うようになっていたのだが、その時点ではウェブログ=ウェブ日記の進化系だと思っていた。しかしながら、具体的にどこが進化してウェブログになったのかといわれるとよく分からず、せいぜい、デザインとコメント機能ぐらいだと思っていた。
しかしながら、2001年9月11日の同時多発テロにおいて個からの情報を発信して以降、アメリカでのさまざまな成長を経て、2002年に日本に本格的に紹介される。その後、紆余曲折を経て、2004年のウェブログブームとなったわけである。
今回の卒論でこのウェブログブームについて扱う気はない。興味があるのは、ウェブログというツール、もしくはコンテンツがインターネットにもたらした変化だ。そのためには、まず、ウェブログというものの定義をはっきりとさせることからはじめたいと思う。
ブログとは、何か?「ウェブログはウェブ日記から発展した。(中略)ブログは名称こそ新しいが、ずっと続いていたものだった。」[松岡正剛の千夜千冊 『ブログ』ダン・ギルモア ]とあるように、ブログで扱われる内容そのものは、ブログというツール登場以前から存在していた。ウェブ日記とウェブログの違いは、トラックバック機能の有無にあると私は考える。
ウェブログには、さまざまな機能がついている。コメント機能・テーマ機能・アーカイブ機能・モブログ機能、アフィリエイト機能、そして、トラックバック機能。しかし、トラックバック機能以外は決して新しいものではなく、ブログ特有のものでもない、コメント機能は、ある程度高性能な掲示板についている”返信”機能と同じものだし、テーマ・アーカイブ機能もウェブ日記の時点から存在していた。アフィリエイト機能は、ウェブログに導入され注目を浴びた機能であり、個人運営のサイトが収入に結びつくという意味では大きな変化ではあったが、インターネットそのものに対する影響は大きくは無いと考える。
ウェブログが、ウェブログたる所以、ウェブ日記と一線を引くのはトラックバックという機能が存在するためである。
では、トラックバックとは何か?
トラックバックは、2002年の8月にMovable Type2.2*1以降に導入された機能で、「映画の現場で使われている用語で、カメラが後ろに下がりながら被写体を撮影すること」[INTERNET MAGAZINE 12月号 p.12]で、
他の記事にその記事を話題にした記事のURLと概要を通知する機能、またその通知形式をさだめた枠組み。この通知する行為をトラックバックする、トラックバックを送るという。通知を受け取ったウェブログは普通、その言及された記事のところに通知された派生記事のURLと概要を一覧表示する。一般に、言及した本人によって送られるものとされている。
リンク元表示機能と違うのは
読者がリンクを辿ったときではなく関連記事を投稿したとき反映される、
記事の概要とタイトルも通知される、
ということ。
[はてなのダイアリー trackbackとは http://d.hatena.ne.jp/keyword/trackback ]
つまり、自動相互リンク作成機能である。
この機能は、インターネットに大きな影響をもたらした。トラックバックにより、「それまで「インターネット大陸」*2の狭間にあって孤立していた個人のウェブが、急速に他のウェブ郡とつながるようになったのである。」」[INTERNET MAGAZINE 12月号 p.13]
トラックバック登場以前のインターネットは、「現実には、すべてのウェブページがお互いに連結されているわけではないのだ。どのページから出発しても、到達できるのは全ドキュメントのわずか二十四パーセントほどに過ぎず、残りのページにはネットサーフィンによってはたどりつけないのである。[新ネットワーク思考-世界の仕組みを読み解く(NHK出版、青木薫訳) p.237]
なぜ、こんなことが起きてしまったのか。それは、htmlの構造的な欠陥としか言いようが無い。インターネットの最大の売りといえば、双方向性だったはずである。にもかかわらず、最も普及した言語、普及した閲覧ソフトが一方向性を内在するものだったからである。
トラックバックは、その一方通行を打ち破る力をインターネットにもたらした。それは、従来のマスメディアに似たトップダウン方式の情報伝達から、ティム・バーナリー博士が夢見た「情報共有スペース」へ近づく一歩でもあるのだ。
*1:
フリー のblog ツールの一つ。とっても高機能・多機能なウェブログ システム 。
Perl で作られたCGI で、ウェブログ の種々の設定、ユーザ管理からエントリー のポスト・編集 、その他もろもろまで、ほとんどの操作をブラウザ 上で行うことが出来る。
RDF Site Summary に対応し、TrackBack 機能を持っている。
フリー のblog ツールの一つ。とっても高機能・多機能なウェブログ システム 。
Perl で作られたCGI で、ウェブログ の種々の設定、ユーザ管理からエントリー のポスト・編集 、その他もろもろまで、ほとんどの操作をブラウザ 上で行うことが出来る。
RDF Site Summary に対応し、TrackBack 機能を持っている。
*2:
「インターネット大陸というのは、アルバート=ラズロ・バラバシが自著『新ネットワーク思考-世界の仕組みを読み解く』(NHK出版、青木薫訳)で説明したネット世界の構造のこと。詳しくは、INTERNET MAGAZINE 12月号 p.13にて。