ゆいつ『ストレリチア』
（あらすじ）
憧れのキャスト・ジンが働いていたクラブへ入店するために面接を受けた太鳳。面接官に揶揄されつつも見事受かり、いざ初出社の日。太鳳の教育係についたのは、面接官のチカという男だった。するとチカから『お前は色気がない』と告げられ、指導を受ける事に。
少しでもジンに近づきたくて色気をだすためのレッスンに励む太鳳だったけれど、ふとした拍子にチカとジンが同一人物だと判明し…？
もっと！もっと！ ８２点
今回ご紹介するのは、ゆいつ先生の『ストレリチア』です。表紙の美しさに目が奪われますねー。
前作『甘えたい獣』が好きすぎて、というか潤太のかわいさ、エロの迫力、絵の美しさに衝撃を受けてすっかりゆいつ先生のファンになってしまった私は、『ストレリチア』は発売と同時に購入しまして、逸る気持ちを抑えながら読んだのでした。
結論。もっと！もっとください！！でした。
お話は、憧れのジン（現在は辞めている）と同じ店で働くことになった太鳳が、自分の教育係のチカが実はジンだったことを知り、驚愕！太鳳に色気をつけさせるための教育をいろいろしていくうちに（エッチなことはありません）、チカと太鳳の距離は近づいていき・・という感じ。
太鳳はとにかくチカ（ジン）のことが大好きで（崇拝のレベル）、大型わんこらしくずっと顔を真赤にしながら尻尾をブンブンしているのですが、結構早い段階でチカも太鳳のことを好きと自覚し、「つきあおう」と言ってくるという意外にスムーズかつスピーディーな展開でした。途中、チカの昔馴染みの大和が出てきたところで、「これは大和が２人の仲を引っ掻き回すのね」という私の下卑た予想もあっけなく裏切られましたし。
さらに意外なことに、ずっと好きだった太鳳のほうが「つきあうこと」に遠慮というか気後れしてなかなか一歩を踏み出さないのに対して、チカの方がグイグイで、なんなら嫉妬もするし手も出してくるし（最後まではしませんが）かなり積極的でした。
いまいちノレなかったのが、太鳳のキャラクターに掴みどころがなさすぎて、共感できないというか思い入れしにくかった点ですね。あまりに初心というか恋愛初心者のような初々しさなんですよね。でもジンに憧れてクラブのキャストという職業をしていて、（しかも前にも他のお店で勤務経験があるらしい）、ストレリチアという高級クラブで働くくらいのキャリアはあるんですよ。そこに説得力というか人物像の一貫性がないかなと思いました。もっと太鳳の人物背景とかキャラクターに掘り下げがあったら、彼の大型わんこのかわいさももっと生きたと思うので、残念でした。
それは実はチカも同じで、それこそ伝説のキャスト的なチカが太鳳に惹かれるのが、「自分を大好きでいつも尻尾をふっている素直な太鳳が可愛いから」だけだといまいち弱いかなーと思いました。彼の、クールだけど実は溺愛スパダリっぽいところとかもっと魅力的になったと思うんですがねー。
２人の人物造形にいまいち深みがないならストーリーで起伏があるのかというと、そんなこともなくて。先程も書きましたが当て馬的なキャラクターも出ず、お互い自分の気持ちは特に葛藤もなく自覚し相手にも伝えているので、さらーっと進んでいく感じなんですよね。まあね、とにかくお互いに相手のことが大好きなのでずっと甘々なので、そこが大好きという人はいいかもしれません。私も好きなんですけどね・・・
そう、ここでもう１つノレなかったというか残念だったのが、甘々なんだけど、いざエロとなると意外にもがあっさりという点。『構いたくなる背中』しかり、『鬼と蛇』しかり、『REVERSE』しかり、ゆいつ先生といえばあの迫力のエロじゃないですか。そしてその迫力にねちっこさという素晴らしい要素が加わり、さらに絵の美麗さがパワーアップしてエロがやばいレベルに到達した『甘えたい獣』ですよ。潤太というイカツイのに超絶エロいというギャップ受けの最高峰が生み出されたあの『甘えたい獣』。その直後の作品の割にエロが・・・。いや、あるんですよ、ちゃんと。エロいし。でもね。もうこちらとしては期待値がすごいことになっているのでね・・・。すみません。「もっと！！我にエロを！！」という気持ちになってしまったのでした。
でも、とにかくチカが美しくて色気がすごいので、目は幸せでした。あとね、服がいいですよ今回は。柄on柄とか花柄とか、チカも太鳳もさすが玄人という感じの服をバッチリ着こなしています。GUCCIぽい感じ？２人の仕事の時だけでなくオフの時の服を見るのがすごく楽しかったです。
ということで、大人の男とかわいい年下ワンコの甘々な恋のお話『ストレリチア』、味はあっさりめなのでゆいつ先生作品入門編にはピッタリかもしれません。オススメです！