おすすめBL漫画『木陰の欲望』 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

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暮田マキネ『木陰の欲望』

 

(あらすじ)

昭和23年、東京親友…“あの日”までは確かにそうだった。だけど今は少なくとも――…。
裕福な家に生まれながらも、病弱で孤独な少年・鼎を支えてくれたのは、明るく元気な庭師の息子・瑞季。鼎にとって初めてできた大切な親友。
しかし、ある事故が原因で瑞季は鼎を庇い背中に大きな傷を負う。そこからすべてが変わってしまった―…。
高校生になった鼎を支配するのは、瑞季への強い想いと独占欲。
「自分だけの瑞季でいて欲しい…それが無理ならいっそー…」

 

拗れてる。でもそれでいい。  81点

 

今回は『木陰の欲望』です。表紙が素敵ですね。こちらの作品、暮田先生らしい拗れに拗れた愛と執着のお話。でも最後はしっかり幸せなゴールに辿り着きます。

 

まず、鼎の境遇がかわいそうすぎる。どんだけだよ宇喜多家!と思ってしまいますが、『つむぎくんのさきっぽ』を読んだら納得の、血も涙もない金持ち一族でした。あっちの煌ちゃんもかなり捻くれ(?拗らせ?)ていて、そりゃそうなるわという感じでしたが、鼎もトラウマ級の孤独感と絶望感を幼少期に体験しているわけですから、まあいろいろ欠落しているんだろうなという感じ。

 

だからそんな彼が自分を孤独から救ってくれた瑞季のことを好きになるのも、絶対に捨てないでほしいと執着するのも必然といえば必然なんですよね。それが思春期特有の欲求や瑞季が離れていくならというヤケクソ気分と悪い化学反応を起こしてまさかの無理やり・・・。まじかーと思いましたね。でも一番引いたのは、終わった後。身体だって辛いだろうし、何よりショックだろうし、悲しいだろうし、自尊心だってボロボロだろう瑞季にかける言葉がそれ!?おまえ・・・。なんかここの場面の、「送らせる」からの「木島云々」の言葉は鼎の精神的未熟さ、幼さがすごく出ていましたねー。

 

うーん。ここを受け入れがたいと思う人もいるだろうし、それによって評価も左右されるだろうなという感じ。こういう行動に至る鼎のバックボーンとか心理の動きはきちんと描かれていましたけどね。

 

一方の瑞季くんはとってもいい子なんですが、鼎への自分の気持ちをすごくネガティブにとらえているというか。瑞季の性格がもう少し豪快な明るさとかがあったら、鼎もああはならなかったかもなんて思っちゃいますね。実は瑞季は繊細すぎるくらい繊細なんだろうね。そして、意外と鼎の方はいざとなったら図太い。やっぱり宇喜多の血なんでしょうか。

 

私は、2人の友人の信二くんが好きでした。ちゃんと2人のことを見ていて、助言もするし、気づかないふりもしてあげられるし、見守ってくれる。頼りになる彼がもしかしたら唯一の共感できる登場人物だったかもしれません。

 

まあでも、物語冒頭で鼎の瑞季への想いの原点みたいな部分が描かれ、物語最後で瑞季の鼎への想いの原点(出会った時に恋に落ちていた!!)が描かれるので、2人の気持ちは同じくらいには重いんだなとわかって、読後感は悪くありません。

 

『つむぎくんのさきっぽ』で大人になった鼎と瑞季が出てくるので、そちらを読んでからこちらを読むとなかなかに感慨深いですよ。ちゃんと大人になってるー。鼎は相変わらずな感じだけどー。

 

あ、あと暮田先生のスペースを聞いていた時に、鼎と瑞季の攻め受け設定についてお話されていて、まさに私も「あ、こっちが攻め?」とちょっと思っていたのですが、ものすごく納得できました。暮田先生はすごくクレバーな方なので、作品や登場人物についてものすごく多くのことを深く考えてらっしゃるので、そういう部分はしっかり作品に反映されるなーといつも思っております。

 

ということで、拗らせ幼馴染男子高校生たちの執着愛、ぜひ読んでみてください!!

 

https://www.cmoa.jp/title/198116/

 

『つむぎくんのさきっぽ』

 

大好きです。鼎と瑞季も出てきますよ。

いい役回り!!大人になったね!!