おすすめBL漫画『オーバー・スコール』 | 偏食猫の好きなものを好きなだけ

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上田アキ『オーバー・スコール』

 

(あらすじ)

5年間の恋が、一瞬で終わった。
断ち切れない想いを胸に抱えたまま、思い出の公園でひとりぼんやりとしていた夏朗に声をかけてきたのは、別れたばかりの恋人にどこか似ている男・梅雨彦だった。
かわいそうなのを放っておけないと半ば強引に連れ帰られ多くの言葉を交わさず、元彼を重ねて自分を抱けばいい、と梅雨彦に流される形で一時の快楽に溺れてしまう。
自分でも知らなかった一面を暴かれるようなセックスの後、再会の約束をして無邪気に微笑む梅雨彦に夏朗の中では何かが確実に変化していたが、彼はやっかいな性癖を抱えていて――。
傷心おひとよし公務員×やっかい性癖ゆるふわ男子
ゆっくりと恋を知る、“恋育”ラブストーリー

 

 

夏朗さん頑張ったね指数 92

 

 上田アキ先生は『恋が落ちたら』が刊行された日に気になって『恋が満ちたら』と同時に購入。あまりにも良かったので、こちらも購入しました。

 

良かったです!!エモいです!

 

ただ、こちらは『ワンダーボーダー』のスピンオフなんですよね。でもそっちは読んでおりません。どうしても主人公のソバカスが気になって。すみません。あと、これがかなり大きいのですが、夏朗さんのことを好きになりすぎて、彼がつらい思いをする『ワンダーボーダー』が読みにくくなっっているのも事実。

 

でも、まさに私がそれでしたけど『ワンダーボーダー』を読んでいなくてもとっても楽しめました。もしかしたら、読んでいた方がもっと夏朗さんの幸せを願う気持ちが強くなって読後の感動もさらに深くなったかもしれませんが、充分良かったです!!

 

ということで、こちらの作品。別れた恋人への気持ちを残したままの夏朗さんが思い出の公園で出会った梅雨彦。

 

いやー、この梅雨彦がね。最初はいいんですよ。明るくて優しくて多分身体の相性も良くて。失恋の傷を速攻で癒してくれるような好青年。ところが、実は厄介な性癖を持っているんですねー。これがちょっと本当に厄介で。

 

しかも彼に依存している豪という人がまた・・。背負っているものが重すぎるのとやっていることがダメすぎて、うーんて感じ。

 

梅雨彦が「恋人」とか「つきあう」とか「愛」とか、とにかく他者との関わり方を知らない、「同情」と「愛」の違いがわからない、と、いろいろな部分が欠けている 人間で、夏朗さんはそれによってものすごく傷付けられます。

 

しかも梅雨彦は自分がおかしいことに気がついていないんですね。元々欠落しているから。だから非難してもわかってくれない。これって絶望的じゃないですか。でも、夏朗さんは頑張るんですよね。ここで手を離したくないって、誠実に梅雨彦に向き合うことを選びます。

 

ここから本当に少しずつ植物に毎日水をやって育てるように、夏朗さんが梅雨彦に「愛」、「相手を大切にすること」を教えていくんですね。とにかく夏朗さんが優しい。穏やかでニコニコしていて大人で、しかもメガネ。いい!

 

さらに、アレの時には意外に雄味が出るというか、荒々しい感じになるのもいい!そもそも上田先生の描く男の人ってちゃんと男の人の身体なのにエロさがあふれてるじゃないですか。夏朗さんも良かったです。

 

上田先生の作品は優しさに溢れているので、こちらの作品でもちゃんと豪が立ち直っていくであろうことも描かれます。そして何より、夏朗さんと梅雨彦の笑顔。それこそスコールの後の晴れた空のように素敵な笑顔が最後に見れてじんわり心が温かくなりました。

 

よかったね~と心から思える。嬉しくてちょっと泣けてくるような気持ち。これって『恋が満ちたら』でも感じましたけど、上田先生の作品の醍醐味かも。そしてそれは、こちらの『オーバースコール』でもしっかりと味わえますので、ぜひ読んでみてください!!