中学生の頃、サッカー部の顧問の先生が履いていたスパイクがありました。  

アシックスの「インジェクター850」。  

当時、日本代表クラスの選手にしか支給されないと言われていたモデルです。

カンガルー革のアッパー。  
シンプルなシルエット。  

そして何より、  
普通のスパイクとは違う特別な雰囲気がありました。

練習の準備の時、  
顧問室の靴棚に置いてあったそのスパイクを、  
私はよくこっそりと眺めていました。

触るわけでもなく、  
ただ「いいなあ」と思いながら。

当時の自分には、もちろん手が届かないスパイクでした。


大学生になった頃、  
サッカー部にアシックスからスパイクの支給を受けていた先輩がいました。  

ある日、その先輩が  
もう履かないということで
インジェクター850をくれたことがありました。  

しかもアシックスラインが黄色のモデル。

ただ、残念なことにサイズが小さくて、  
自分では履くことができませんでした。

しばらく部屋に飾っていたのですが、  
その後、誰かに譲ってしまいました。

今思うと、  
履けなくても残しておけばよかったな、と思うこともあります。

大人になってから、  
アディダスの「ワールドカップ」と「コパムンディアル」を買いました。

カンガルー革のスパイク。  
シュータンを折り返すクラシックなデザイン。

履いてみると、  
「ああ、やっぱりいいな」と思いました。

サッカーをしていた頃に憧れていたものは、  
大人になっても、  
どこか心の中に残っているものですね。