最後にMくんの実家の県に旅行に行くことにした。
記念旅行。
Mくんの小学校に行った。
Mくんの実家の前を通った。
ゆっくりと進む鈍行が心地よかった。
Mくんと一緒だから、些細なことが、キラキラ輝いて
生まれて初めて
生きてて 楽しいと そう思った。
Mくんは旅行中に、「もう絶対揺らがない。凪さんと生きていく」
絶対。絶対。絶対。って。何度も。
大人になったら、がんばって働いたら
きっと幸せになれるんだって信じて疑わなかった。小さい頃。
いざ大人になってみてわかったこと。
努力しても幸せになれない。努力だけじゃ、なれない。
大人になっても楽しい生活なんて待ってない。
昔、生きることに疑問を感じて先生に相談してみた。
その時、先生は「せめてあと○年生きてください」と言った。
○年生きてみた。我慢して、がんばって生きてみた。
でも、○年後、何の答えも見つからなかった。
Mくんと生きていければ、きっと、それが答えだったんだろうな。
旅行から帰る時、手を繋いでコインロッカーに向かった。
後ろからMくん!という声が聞こえた。
Mくんの奥さんだった。
奥さんはパニックで話に聞く耳を持たず
私を泥棒猫扱いした。当然だ。
死ぬ!とわめき散らした。
「Mくんと別れるならこの子も連れて死んだ方がまし!」と。
私は奥さんの腕を掴んだ。
同情じゃない。
死んでほしくないだけだ。
私は人を不幸にしたいわけじゃない。
Mくんのことが好きなだけで、私も幸せになりたいだけなんだよ。
「私はMくんが好きで結婚したいです。絶対に私がいいとMくんが言うから、私も反対されてもたとえ子供がいても頑張ろうと思いました。けど、絶対に誰かが傷ついてしまうんです。みんなで幸せになろうだなんて虫のいい話はないよ?Mくん。今、私を断ったら私が傷つくからなんていう気持ちだったら要らないから。私を切ってくれていいから」
二人の前で言った。
Mくんは奥さんの前で
「凪さんが一番好きなんだ」と言った。
私は奥さんに「Mくんのことが一番好きなら、Mくんの幸せを一番に考えるんじゃないんですか?奥さんが死んだらMくん全然幸せじゃないですよ・・・。奥さんが行く場所ないのなら、ウチ使ってください!生活費ないなら、私も働きますから!」
本心からそう言ったけど、伝わるはずもなかった。
奥さん「どうしてそんなことまでするの?子供まで取り上げるの?あなたはMくんに選ばれたからそんなことが言えるのよ!」
子供まで取り上げるだなんて・・・。正直他人の子供なんて育てたくないし、子供がいなければよかったとも思う。人の不幸の上に自分たちの幸せは成り立たないとも思う。
でも、このままじゃ誰も幸せになれないよね。
だって、Mくんが言うには二人の間に会話もなくて、冷め切ってるって。
私だったら、愛されてもない人に同情で一緒にいてほしくはない。
プライドが高いんだろうな。変なところで。
だから、今回も泣いてすがらなかった。
すがりたかったよ。だって人生で初めて生きててよかったと思える瞬間を与えてくれた人だもの。
私はMくんがいなきゃ楽しくもなんともなくて、すぐに
すぐに死にたくなっちゃうんだもの。
その後、奥さんが家に電話してきた。多分、Mくんの携帯を盗み見して。
奥さんは「もし凪さんを選んでも、周りに反対されて辛いだろうけどがんばってください。」と言ってくれた。
「本当はすごく計算高い口のうまい人なのかなって思ってました。凪さんと話せてよかったです」と言ってくれた。
伝わった。。。のかな。。。よかった、と思った。
ここまで奥さんが言ってくれてるのに、
また
Mくんの決断は覆った。
私を一番大切だと言っておきながら私を傷つけるMくんはろくでもない人間だと思う。
一度薬をがぶ飲みして意識の朦朧とした私を放って会社に行ったMくんなんて人として最低だと思う。
私はその後の2週間くらいの記憶がすっぽり抜けてしまっている。
すっぽり抜けてしまってる間に、Mくんは「あの時の凪さんはかわいかったなぁ」と
嬉しそうに話していた。
こんなに傷ついてぼろぼろになってる私を、またしても弄んで
さぞかし楽しかったでしょうね。
それなのに、なんでそんな人間のことが忘れられないのだろう。
忘れられなくて、飲みの帰りの電車で寝ながら
閉じた瞼から涙が流れ落ちた。
上司は、眠ったフリをしている私の手を握った。
私たちは変な関係になった。
私が好きなんだって。上司にだって家庭があるのに。本当にくだらないね。
それもMくんに話した。
もう会社も嫌だし、家にいても毎日泣いてるだけだ。
やっぱり、私、幸せになれなかったよ。
Mくんをきっぱり断ち切って、がんばろうとしたけど、がんばれなかったよ。
Mくんには「せめて奥さんだけでも幸せにしてあげて。私がこんな思いして身を引くんだから、こんな代償があるんだから、幸せになる人がいないと身の引き損じゃない」と言った。
そんなのカッコツケに決まってるじゃない。
私は、私が一番、幸せになりたかったの。平凡な幸せでいいから。お金だって暮らしていけるだけでいいから。
毎日笑えて、毎日生きててよかったと思えるくらいの幸せが欲しかったの。
でももうどうやっても手に入りそうにないから。
Mくんのいないつらさと人生のわずかな楽しみ
■つらい→Mくんのことを思い出して泣く日々。1年くらい経った今でも毎日忘れられなくて、きっとこれからも一生縛り付けられる苦しみ
■楽しみ→ペットがかわいいから少し笑顔になれる。1日に1回すら笑えない日もある。1日に1回すら人と話をすることもない日もある。こんな生活
二つを天秤にかけても、そんなに生きている意味があるとは思えない。
好きな人もいなければ、守る人もいなくて。
かわいくなりたいとがんばっても、妻子ある人にしか好かれない。逆効果?
Mくんにだけかわいいと思われたくてがんばっても、「奥さんは年上でかわいそうだから。凪さんはかわいいから大丈夫」と言われた。逆効果だったね。頑張り損だ。
最近じゃ体調もすごく悪い。どうやら手術しないと普通の生活ができないみたい。
手術は近くの病院で4年半待ち。お金もかかる。
生きてて楽しいわけじゃないのに、どうしてそこまでして生きることにしがみついて
給料稼がなくちゃならない?
生きてる意味なんて、生きてる間は誰もわからなくて
死ぬ間際に「生きててよかった」と思えればそれでいいと思ってた。
だって、生きてる意味を考えはじめたら、きっと、また死にたくなってしまうから。
あと4時間ほどで誕生日なの。
誕生日になったら、その後の1年、こんな風に泣いてじゃなく笑って過ごしたいな。
幸せになりたいな。
そう思う反面、
もうこれ以上無駄に歳を重ねたくないし、これ以上生きていく自信がない。
もう終わりにしたい。
こんな風に思う自分がいる。
私の感情は哀しみの割合がひどく多いんだよ。
7割くらいは哀しみで出来てるんじゃないかな。
世の中にこんなにたくさん人間がいて、
街中には幸せそうな人たちがたくさん歩いてるのに
どうして自分はそうなれなかったのだろう。
がんばりが足りなかった?
一生がんばり続ければたどり着ける?
がんばり続けても結果はわからないよね。
もうがんばるのは疲れた。だいぶ走ったよ。
「凪さんは明るくてかわいくて悩みなんてないでしょ?」
みんなの言うようにそうだったらよかった。
本当の私は違うよ。
仮面だからすぐ剥がれる。
がんばって明るくして、これだけ努力して「まぁかわいい」と言われる程度なんだよ。
疲れた。
プライベートも会社も変な風になっちゃって
かといって家に引きこもるわけにもいかない。頼る人もいない。
もう1週間くらい会社を休んでる。
私は弱い人間。
自殺はダメだとか言う人がいるけど、それももっともだと思うけど
こんな弱い人間は、この先つらいことがあったら、その時もきっと折れるだろうし
どの道淘汰されゆくのだから、
それが今でもさして問題ないかと思う。
ここにはもう来ない。さよなら。ありがとう。