「平成ガメラ三部作」観ましたか? | モノゴトをオモシロくスルドく見る方法「かふてつの方丈記 」

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or
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最近の投稿、特にコメント欄などでコーショー路線に走っちゃってるような気がして、危機感を感じたので、こんなネタも入れてみます。

 

まず、今更ですが「シン・ゴジラ」。今年3月の第40回日本アカデミー賞で怪獣映画として初めて最優秀作品賞、最優秀作品賞といった主だった賞を総なめにしました。ご同慶の至りです。
 
 

「シン・ゴジラ」は平成ガメラシリーズ、とりわけ『ガメラ2 レギオン襲来』の延長線上にあり、これを発展的に大成したものと、怪獣映画ファンなら誰でも皆感じてるだろうと思います。『ガメラ2 レギオン襲来』は、怪獣映画をタクティクスシミュレーションとして描いた傑作として有名です。防衛ラインや部隊・兵器の配置を設定して、敵が防衛線を次々と突破してくる所など、シミュレーションゲームの「大戦略」と同じ事をしています。

 

それにポリティカルな要素を強化して、東日本大震災や福一原発事故の経験も踏まえてスケールアップした上で歴代怪獣映画のいいとこ取りもして(進化して変態する要素など)怪獣映画の集大成としたのが「シン・ゴジラ」だと思いました。


因みに両作品で特技監督をやったのが樋口真嗣です。
 
『ガメラ2 レギオン襲来』をタクティクスシミュレーションにした功労者は脚本の伊藤和典だと思います。平成ガメラシリーズの監督は金子修介ですが、金子修介はどちらかというと伝奇的な要素に興味があるんじゃ無いかと思ってます。『ガメラ3 邪神覚醒』は伊藤和典は途中で降板したらしいですが、その結果、伝奇的な要素が強い仕上がりとなりました。また、金子修介は「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」も撮りますが、これも伝奇的な要素が強い物となっています。
 
平成ガメラシリーズは他にも「怪獣映画」にいろいろと革新をもたらしました。まず、怪獣を未知の「巨大生物」として捉え、しかる後に命名する点とか、「巨大生物」が暴れ回ることを「災害」として認識する点や、自衛隊の出動・攻撃手続きにコンプライアンス(法令等遵守)の要素をきちんと踏まえる点などです。
だから、ガメラもギャオス等のヒール怪獣から人類を守るのですが、「巨大生物」であるが故に「災害」をもたらし人類を困らせてしまうし、怪獣が出たからと言って自衛隊も安易に攻撃出来ないのです。
 
 

平成ガメラシリーズについて順を追ってざっと説明すると、
 
最初の「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995年)では敵のギャオスを「人類の天敵」として古代人が人口抑制のため人為的に作り出した物と定義します。そしたらギャオスが暴走し始めたので困った古代人がギャオスの制御装置としてガメラを作ったとされています。なお、ガメラは主人公の少女(藤谷文子)と精神的にシンクロすることでパワーアップします。



 

次の『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)では、宇宙から飛来した共存不能な敵性生物であるレギオン(と草体)から、ガイア(地球)を守るため、ガメラが立ち向かいます。この作品は、怪獣映画をタクティクスシミュレーションとして捉えた大傑作となっています。また、星間種子やレギオンの生態などハードSFの要素が取り入れられており、1996年第17回日本SF大賞を始め数々の賞を受賞します。もし人類がガイア(地球)を害する存在となってしまったら、ガメラを敵に回すことになることも示唆しており、なかなか深い物があります。



 

 

 最後の『ガメラ3 邪神覚醒』(1999年)では、第一話の「ガメラ 大怪獣空中決戦」で「ガメラ災害」に被災し両親を亡くしたためにガメラを憎む少女(前田愛)が登場します。そして第一話でガメラが藤谷文子とシンクロしたように、前田愛の憎悪と山奥の神社に封印されていたギャオス変異体がシンクロして強力な新怪獣イリスを生じてしまいます。ラストで前田愛は正確な記憶を取り戻します。両親を殺したのはガメラではなくギャオスだったのです。そしてイリスに同化させられた前田愛はガメラに救われ、ガメラはイリスを倒すのでした。



 

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なお、平成ガメラシリーズはキャスティングも素晴らしいです。

 

『ガメラ2 レギオン襲来』ではまだ無名だった吹越満を使ってるし、

 

 

『ガメラ3 邪神覚醒』では「半沢直樹」でやっと日の目を見た手塚とおるを使ってます。この目の付け所はタダモノではないです。

 

 

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で、こないだ「ワンダーウーマン」が面白かったと言う話を書きました。
 
 

ここからは個人的な思い込みかもしれませんが、「ワンダーウーマン」ラストの対決シーンのVFXは、非常に樋口真嗣っぽく感じました。光線攻撃なんかもレギオンの引用としか思えません。しかも更に、ワンダーウーマンがラスボスを倒す時も、『ガメラ3 邪神覚醒』でガメラがイリスを倒したのと同じ手口[注]を使うのです。これはねぇ、絶対「平成ガメラ三部作」の影響を受けてますよ。私はそう確信するぞ。



[注]この「手口」は古事記にも出てくるから特段目新しいものでもないけど。因みに天若日子がやられた「手口」です。
 
なので、平成ガメラ三部作、とりわけ『ガメラ2 レギオン襲来』を未見の方がいらっしゃるようでしたら、是非ご覧頂くことをお奨めします。
 
リンクは『ガメラ2 レギオン襲来』の予告編です。これは映画の予告編としても最高の出来です。音楽は「水曜どうでしょう」の予告編に流用されています。実は「水曜どうでしょう」に出てる鈴井貴之、大泉洋は『ガメラ2 レギオン襲来』に出演しているのでした。(大泉洋は何処に出てるか判らないけど。札幌の地下鉄の被害者役です←顔が見えない)