東野圭吾の次に読もうと思った作家は
知念実希人さんです。
お医者さんでもあるので、病院のお話しが多いのですが、
サスペンスであり
一つ一つの物語に深いテーマがあり
事件や人間模様がテンポよく描かれている
そういう点で、東野圭吾さんとすごく似ているものを感じています。
今までに読んだ本は次の通りです。
屋上のテロリストはここでも紹介しました。
優しい死神の飼い方
ひとつむぎの手
螺旋の手術室
リアルフェイス
そして、最近読んだのが
崩れる脳を抱きしめて
よかったな~
ウスイ先生(26歳)とユカリさん(28歳)のラブストーリー
でもそこには、深い秘密が隠されている
あるホスピスの研修医であるウスイ先生
ウスイ先生は、お金に縛られている
「あなたは頑張って医者になった。これから普通に働けば、そんなにすごい贅沢はできなくても、借金を返して。家族を養っていくことぐらいできる。けれどあなたは、可能な限りの収入を得ようと、目を血走らせて勉強しているんでしょ。体と心を壊しかけてまでしてね。私が言いたいのはそうやって雁字搦めになっているあなたは、正直痛々しい」
そしてウスイ先生の患者で、ホスピスに入院しているユカリさんは
治療できない悪性脳腫瘍を患っていた。
ユカリさんもまた雁字搦めになっていた。
「ねえ、私ぐらいの年で、『死』を宣告されるってどういうことか分かる?分かんないよね、こればっかりは経験してみないと。最初は信じられないし、怖いし、ショックだしでパニックになる。けど、落ち着いてくると、なんというか・・・・、ただただ虚しくなるのよね。自分の人生が無意味だったんじゃないかって。そう。病気になる前は八十歳ぐらいまでは人生があると思っていた。だから大学まで出て、就職した。そのうち運命の人を見つけて結婚、出産、育児、そうやって年を重ねていって、最期は家族に見守られて・・・・。そんな一生をイメージしてきたのよ。けど、その未来が一気に消え去った。それまでの苦労とか努力とかが全て無意味になる。自分の人生ってなんだったのって思うのも当然でしょ。」
そんなウスイ先生とユカリさんが死について話すシーンがあります。
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立ち上がろうとすると、ユカリさんがベッドから身を乗り出し、僕の白衣の裾を握った。
「もう少し……。もう少しだけでいいから、ここにいてくれないかな」
「どうかしました?」僕は再びパイプ椅子に腰掛ける。
「……怖いの」ユカリさんは顔を伏せると、蚊の鳴くような声で答えた。
「怖い? 発作がですか? 大丈夫ですよ。点滴で予防薬を投与してありますから」
ユカリさんは「そうじゃない」と弱々しく首を左右に振る。
「死ぬことが……、消えちゃうことが……、すごく怖い」
ユカリさんの縋りつくような眼差しが僕を捕らえる。
「昼は平気。けど、夜、ベッドで波の音を聞いていると、堪えきれないぐらい怖くなるの。波音が頭の中に響いて、脳が……『自分』が少しずつ崩れていくような心地になる」
ユカリさんは痛みに耐えているような表情を浮かべる。
「いま、『私』は間違いなくここにいる。ここに存在している。……、こんな言い方すると陳腐かもしれないけれど、『魂』みたいなものが体の中にあるのを感じ取れる」
胸の前でユカリさんは両手を重ねた。
「けど、死んじゃったら、この『私』がどうなるのか分からない。体を離れてどこかに行っちゃうのか、それとも‥‥‥シャボン玉が割れるみたいに消えてなくなっちゃうのか」
ユカリさんは自分の体を抱きしめるように両手を回す。僕は一瞬躊躇したあと、おずおずとその華奢な肩に手を添えた。細かい震えが掌に伝わってきた。
「なにも考えられなく、感じられなくなる。『私』が完全に消えちゃって、時間だけがずっと過ぎていく。それを想像すると怖くて怖くて、どうしていいか分からなくなっちゃうの」
悲痛な声色で言うと、ユカリさんは潤んだ目で僕を見つめる。
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このシーンで私は思い出していた。
私も、同じように怖かった。
あれは、まだ小学生だった。
母が内職をしている横でなんとなく、考え出した。
死んだらどうなるんだろう?って
何も感じなくなる
手も足も動かせなくなる
お葬式のあと、燃やされてしまうんだ
そしたら
僕どうなるんだ?
死ってどういうことなんだ~
無性に怖くなった
怖くて怖くて、大声で叫びたいのだけど、
なんか、それは変に思って叫べない
涙だけが流れていた。
母が気づいてくれたんだろう。
いいんだよって言って
何も聞かずに、背中をなぜてくれていた
ずっと。
何か、変な展開になってしまいました。
でも、人はいろいろな気持ちに雁字搦めになって生きているのも事実。
それを何とかと解き放つことができれば、少しは楽に生きられるのかもしれませんね。
この物語、とても考えさせられました。
そして素敵なラストが待っています。
ぜひお読みください。
そして、しばらくは知念実希人さんを追いかけていこうと思っています。






