街を歩いていると、

「日本人のかたですか?後ろから本が見えていますよ」

と声をかけられた。

振り返ると日本人の女性と、現地の男性がいた。


ガイドブックは観光の必需品なので、常時取り出し易いリュックの後ろのポケットに入れている。

ポケットからガイドブックの日本語が見えていると、危険だというのだ。


女「日本人だとわかると危ないですからね。いつ来られたんですか?」

稲「今日の朝着いたばかりです」

女「チャイ飲みました?」

稲「いえ」

女「じゃあ、何かの縁ですし、一緒に飲みましょうよ」


女性は4年トルコの住んでいるらしい。

ついていくと、

「私、お店やっているんですよ。すぐそこなのでそこで飲みましょう」


「?!」若干嫌な予感がした。


5分ほど歩くと、道の奥まった所に店はありシャッターが閉まっている。

店番はちょうどお祈りに行っており居ないらしい。


断ろうとした矢先、シャッターが開く。


女「どうぞ」


店内に案内された。お土産屋らしく、中には陶器やスカーフが並ぶ。きれいな店内だ。


女「どうぞ見ていって下さい」

女性はバザールに比べ、手作りで安いことをアピールしてくる。


「そうきたか・・・」


しばらくすると店番の人も帰ってきた。日本人の女性と現地人2人は何やらひそひそ話すが言葉はわからない。

わからないが、自分にとっていい話ではなさそうだ。


全く興味がない素振りで商品を見る。

チャイの話はどこかへ行ってしまい、商品のプレゼンを受ける。


女「陶器は興味ないですか?このスカーフは女性へのお土産にいいと思いますよ」


陶器には大いに興味があるが、そもそも今はお土産を買いたいモードではないし、最終日にしか買わない。


無言で一通り商品を見て、帰ろうとした時、

女「チャイ飲みましょうか?」


席を案内された。

現地のアラブ人が流暢な日本語で聞いてきた。

男「明日の予定は決まっているんですか?」

稲「決まってないですけど、明日はゆっくりします」


お土産がダメなら、観光プランでも薦めるつもりだったのだろうが、素っ気無く返事したので、

それから勧誘はなくなった。


無言でチャイを飲み干した後、帰る素振りを見せ、

稲「チャイいくらですか?」

女「私たちのチャイに付き合ってくれたので、お金なんていいです」

稲「ごちそうさまでした」

といい席を立ち、店を出た。




中心街では、現地のトルコ人によく声をかけられる。

やはりここでも日本人は金持ちで甘ちゃんなのでいい鴨だ。


ただ勧誘を受けるのは、ここ最近の旅行(イギリス・ドイツ)ではなかったので、

「海外に来た!!!」と実感でき、本当に心地良い。

思わず返事したくなる。

この緊張感は海外一人旅の醍醐味ではある。


ただこの1件があり、

慣れてきた頃が最も危ないという言葉を思い出した。


「コンニチワ」→「アニョンハセヨ」→「ニーハオ」

3段階で攻めてくるが、これ以降は無視を徹底することにした。



「初心忘るべからず」