腹水とは?

腹水 (ふくすい) は、主に腹腔内に異常に多量の液体が貯留した状態、またはその溜まっている液体を言います。

 

腹水が起こる原因は?

正常でも腹腔内には少量の液体がありますが以下のような状態で腹水が溜まると言われています。

 

・血漿タンパク質の減少による膠質浸透圧の低下
・門脈圧の亢進
・腹膜炎、悪性腫瘍の腹膜播種など

 

以上のような原因・状態により、腹腔内に多量の漏出液や滲出液が見られるようになります。

特に肝硬変ではアルブミン合成能低下、門脈亢進が起こり漏出性の腹水が起こり、腹膜の炎症や癌などでは滲出性の腹水が起こると言われています。

女性の場合は子宮に関連するガンなどを疑う場合があります。

 

 

腹水の所見は?

 

急な体重増加、お腹が膨れる、尿の量が極端に少なくなるなどの所見がある。

また、病院ではCTスキャンやエコーなどを使用して腹水の貯留を確認することができます。

 

 

腹水の一般的な治療法は?

 

・利尿剤
利尿剤は体内の水分を強制的に排出させる作用があります。それにより腹水を減らす事を促します。

 

・アルブミンの点滴
外部からアルブミンを体内に入れる方法です。健常者ではアルブミンは肝臓で合成されるタンパク質となりますが、肝硬変などが起こると、肝臓でのアルブミン合成能力が低下し、低アルブミン血症など起こす事があります。その結果、血漿の膠質浸透圧が低下し血管内に水分を引き込むことが出来なくなります。アルブミンの点滴により、一時的ではあるが膠質浸透圧を上昇させ、腹水を血管内に引き戻すことができる。

 

・腹腔穿刺
腹腔内へ注射または管を入れ、腹水を直接腹腔から抜く方法です。腹水を減らす意味では即効性もあり効果もありますが、腹水を起こす原因が取り除かれない限り腹水は再び溜まってきます。腹水の中には血漿タンパク質であるアルブミンなどが多く含まれるため、腹腔穿刺を回数多く行うと体内の血漿タンパク質の減少を招いてしまい、腹水を酷くなってしまいます。またCARTと言って、抜いた腹水を濃縮して再び腹腔や静脈に戻すこともある治療法もあるようです。

 

 

腹水の東洋医学的な考えは?

 

腹水を東洋医学的に考えると、全てではありませんが水毒(水滞)であると位置づけられています。水滞は読みどおり、体内の水(津液)の流れが滞っている状態を言います。東洋医学的な考えで気血津液弁証がありますが、気・血・水のバランスがどれか一つでも崩れてしまうと、体調の悪化につながると考えられています。その為、互いにバランスが取れるようにしていくことが東洋医学の一つの考えとなっています。

 

 

東洋医学を取り入れるメリットは?

 

東洋医学の強みとしては慢性疾患を含めた現代医学では対処できにくい病気に対して、五臓六腑のバランスを整える事によって、原因部分から病気の改善にアプローチできる事ではないでしょうか。 原因不明の症状にも、お客様に寄り添って一緒に改善できることも、東洋医学のメリットだと思います。

 

 

東洋医学で考える腹水を減らすポイント

①:血液の流れを良くする
腹水の症状は、血液の流れが悪くなる事で、本来、出ていくはずの水分が滞っている状態です。そこで、「漢方」の作用で、血液の流れを良くする事ができれば腹水が溜まる事を防げます。水分代謝を上げる為に血液の流れを良くする事は、腹水対策で重要です。また血液の流れを良くすることで浮腫み(むくみ)を防げます。

②:アルブミンを増やす
肝硬変などで腹水が溜まっている方の血液検査結果でアルブミン(ALB)が非常に下がっていることが多いです。アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質ですが、腹水が溜まり始めている方は「アルブミンが低値=腹水が溜まる」という状態になっています。

肝臓を元気にしアルブミンの合成力ができれば溜まっている腹水が自然と血管内に戻るようになります。

③炎症を抑えると共に原因疾患と免疫の対策
腹水の原因は漏出性だけでなく、炎症による滲出性の腹水の場合もあります。その場合は原因部分の炎症を抑える必要があります。

 

④:体内の余分な水分を排出させる
腹水に症状が出ている方は体の様々な臓器の機能が低下しています。その為、漢方の働きで、栄養や血液を全身に巡らせ体全体の水分排出を良くします。

 

⑤:排便を良くする
肝臓の機能に加え、腸の機能が低下していくとアンモニアの分解、排出ができなくなり、体に溜まったアンモニアにより肝性脳症を起こします。その為町のなどの機能向上を考えます。

 

⑥:腎機能の低下を予防
腎機能が低下すると、老廃物の尿からの排出ができなくなります。その為、腎機能が衰えないようにしていく事が大切です。

⑦:栄養状態を高め、新陳代謝を向上
栄養状態の低下・貧血は総合的にタンパク質の低下を招き、腹水の原因になります。栄養状態を高め、栄養の貯蔵庫である肝臓にも、しっかり栄養を与えることで新陳代謝の向上にもつながり→「胃・腸・肺・腎」の機能向上を目指すことを考えていきます。

 

 

その他の腹水の治療法

温熱療法

腹水の治療に役立つものとして、温熱療法などもあります。温熱療法では体を温めることにで血行が良くなり、もしかすると漢方の作用も全身に行き渡りやすくなり、ポジティブに働く事が期待できます。

 

 

鍼灸治療

 

鍼灸治療でも血行を良くすることや免疫力の向上作用があり、また下行性痛覚抑制系など、痛みにもアプローチが出来る部分があり、腹水で起こる様々な不定愁訴にも役立つと言われています。

 

 

漢方

 

 

漢方でも寒熱、虚実など患者の方の体質を見極め、適切に組み合わせること
で体の栄養状態を高めたり、血行を良くしたりすることで五臓六腑のバランスを整えることによって腹水にアプローチも可能と言われています。

また漢方では腹水に関連する文献等も出ているようです。

漢方エキス剤による治療が奏効した高度の腹水と浮腫を伴う重症アルコール性肝障害の一例

日本東洋医学雑誌

臨床経験 五苓散が奏効 した癌性腹膜炎腹水の一例

日本東洋医学雑誌

腹水の治療で補気建中湯 (ほきけんちゅうとう)を使う方もいますが、一概に腹水だからコレというものではなく、漢方は表裏、寒熱、虚実、陰陽、など様々な要素から得た情報を組み合わせるため、漢方を自分で決めるのではなく腹水の状態に詳しい漢方の専門家に相談してみることが良いでしょう。

 

腹水に関連する漢方の値段・価格の相場は?

 

腹水に関連する漢方の価格は、およそ1万~5万円/月程度と、値段に幅があります。

なぜ漢方の値段に開きがあるのか?

漢方は、患者さんの体質や病歴、置かれている状況等を考慮して組み合わせるもので、状態によっては漢方の種類が増えるため、どうしても皆同じというわけにはいかず価格に差があります。

 

予算に合せることもある程度は可能ですが、最初から予算を聞いてきたり、とくに問診もせずに上記のような体質や状況を考えず、一般的な古来の漢方薬を選んで出してくる漢方薬局もあるので、その点は注意した方がよいでしょう。

 

値段が気になっても、腹水の漢方を相談する際は、まずはベストな提案をしてもらい、後から予算の調整をしたほうが賢明です。

 

東洋医学的に腹水の治療を始める場合

東洋医学的治療は、体質の調査から始まり、陰陽のバランスを整える食事療法や漢方などを用いて体全体の機能を改善します。健康管理と生活指導も重要であり、個々の症状や体質に合わせたアプローチが必要です。そのため専門家への相談が重要になってきます。