「国民死刑投票」、正義をどのように定義するか
IZE(8/20)
最近、視聴者に多く愛されているジャンルの一つは復讐物だ。特に法というシステムを通じてではなく、悪人に直接的に復讐する私的制裁物が多くの人気を集めている。それだけ司法府と法に対する国民の信頼度が低くなったという意味だ。SBS「国民死刑投票」もやはり表向きでは痛快な私的制裁物の姿を帯びている。しかし、詳しく見てみると、結局正義という価値に対する根本的な質問を投げかけている。
SBSの新しい木曜ドラマ「国民死刑投票」は悪質な犯罪者を対象に国民死刑投票を行い死刑を執行する改奪を追跡する話を描いた「国民参加審判劇」だ。荒々しく猪突的な刑事キム·ムチャン役にはパク·ヘジン、正義を追う警察ジュヒョン役にはイム·ジヨン、善と悪の境界に立った法学者であり囚人クォン·ソクジュは俳優パク·ソンウンが引き受けた。
同名のウェブトゥーンを原作とするが、原作の主要設定とキャラクターだけを取っただけで、具体的な内容と展開は大きく異なる。2015年から2年間公開された原作の時点と現時点の間にさらに恐ろしく公憤を呼び起こす事件が発生したためだ。「国民死刑投票」序盤には社会的にイシューになった色々な事件を連想させるエピソードが登場する。正体不明のケタル
はまともな審判を受けられなかった「無罪の悪魔」たちを公開し、彼らを処罰するか投票を進行する。これを見た成人たちはスマートフォンを通じて簡単に投票し、過半数が賛成する場合、ケタルは彼らから直接審判され
る。
大きな枠組みで見ると、最近流行している私的制裁を素材にしている。成人になった校内暴力被害者が成功した校内暴力加害者に私的な復讐を加える内容を盛り込んだネットフリックスオリジナル「ザ·グローリー」、ベールに包まれたタクシー会社虹運輸が無念な被害者に代わって復讐を完成する「模範タクシー」が代表的な例だ。両作品とも法的には完成できない「復讐」に対して主人公がこれに代わる過程を見せながら多くのサイダーをプレゼントした。「国民死刑投票」も同様だ。お金と権力を利用して法網を巧妙に抜け出したり証拠がないという理由で処罰さえ受けない悪人たちに「ケタル」が直接復讐を加える姿は痛快さを与える。
一つの違いがあるとすれば、「国民死刑投票」は視聴者を
積極的に引き寄せているという点だ。「国民死刑投票」の投票対象者は犯罪事実が確実だが、色々な理由でそれに合う処罰を受けられなかった人々だ。「ケタル」は彼らの死刑可否を投票に委ねる。対象は自分が選定しても処罰自体は世論を通じて決めるのだ。これまで第三者の視線で私的制裁ドラマを見た視聴者たちは「私ならどちらに投票するか」を悩み、次第にドラマの中の世界に吸い込まれることになる。
そのため「国民死刑投票」を単純に私的制裁物と見てはならない。悪人を処罰するかどうかを決める一人一人は結局、自分の価値観によって票を行使するものだ。今まではあまりにも明確な悪人が登場したが、多様な価値観と利害関係が相反する人物が投票対象者に上がってくる場合、また別の社会的問題を引き起こす恐れがある。また、反論の機会が与えられないまま処罰可否だけを決めるシステムによって魔女狩りの犠牲が生じることもあり、これを悪用しようとする勢力が登場することもありうる。
見た目は国民の意思により悪人に処罰を下す「国民死刑投票」のシステムは完璧に見えるが、このような弱点が隠れている。「国民死刑投票」はこのように完璧でないシステムを通じて視聴者に正義とは何であり、その正義を守るために法はどんな役割をしなければならないのかに対する質問を投げかけているのだ。
しっかりとした演技力で劇をリードしていくパク·ヘジン、イム·ジヨン、パク·ソンウンが各自が定義する正義が違うという点も印象的だ。3人の他にも劇中に登場する多くの人々が各自自分の基準に従った正義を胸の中に抱いている。「国民死刑投票」というシステムを通じてこの価値観が衝突した時、どんな演技が出てくるか期待が集まる。
「国民死刑投票」は毎週木曜日に週1回放送される。SBSで当面の月火ドラマスロットを廃止し、バラエティ番組を入れることにしたためだ。果敢な勝負だが、最初からひねくれた。初放送となった8月10日には序盤、視聴者を確保するために2回連続放送を決めたが、台風「カヌン」関連ニュース特報によって放送が延期された。結局、予定されていた2話ではなく1話だけが放送された。また、結末のために走らなければならない9月末には秋夕連休と杭州アジア大会が待っている。状況によっては丸ごと1週間を渡って走るか、延期される可能性も残っているわけだ。
視聴者の離脱を防ぐためには、重要な質問を投げかけながらも早い展開、痛快なエピソードなどを披露しなければならない。1回4.1%で始まった「国民死刑投票」の視聴率は2回から3.8%に小幅下落した。ただし、色々な人物が本格的な活動に乗り出すならば十分挽回できる数値だ。単純な私的制裁物を越えて視聴者に深いメッセージを伝える「国民死刑投票」が反転に成功できるか関心が集まる。