2013年に向けたアメリカの環境政策 | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)環境翻訳担当のY.M.と申します。

環境翻訳2012年11月に再選を成し遂げたオバマ大統領は、勝利演説で、"We want our children to live in an America that isn't burdened by debt, that isn't weakened by inequality, that isn't threatened by the destructive power of a warming planet." と述べ、地球温暖化問題をアメリカが直面する3つの脅威の1つと位置づけました。歴史上もっともグリーンな大統領と歓迎されながら、一期目の環境施策が期待値ほど実を結ばなかったオバマ大統領。二期目の環境政策をどのように捉えているのでしょうか。大統領就任挨拶から論点を拾ってみました。

1)「これまでのエネルギー利用が敵国を強化し、地球を脅かしてきたことの証拠が日々明らかになっている。」
"Homes have been lost, jobs shed, businesses shuttered. Our health care is too costly, our schools fail too many, and each day brings further evidence that the ways we use energy strengthen our adversaries and threaten our planet."
オバマ大統領は他国の石油への依存削減を大きく打ち出し、2011年には石油輸入率でアメリカ史上初の45%以下を達成しました。同政権が強調しているのは安価の国内産天然ガス。ただし、連邦政府所有地での掘削が年々厳しくなっていること、水圧破砕(hydraulic fracturing)への規制が強化されていることが課題として挙げられています。

2)「車に燃料を提供し、工場を動かすため、太陽、風そして土を利用しよう。」
"We will harness the sun and the winds and the soil to fuel our cars and run our factories. And we will transform our schools and colleges and universities to meet the demands of a new age."
前回の大統領選挙で注目を浴びた再生可能エネルギー(renewable energy)政策は、政府から多額の補助金を受けながら倒産した大手太陽光発電会社 Solyndra によって大打撃を受けました。この分野の産業を後押しする資金の確保には議会の支持が必須であることが課題となっていますが、今期も再生可能エネルギー開発利用を目指す方向性は変わらない見通しです。

3)「古き仲間、昔の敵とともに、核の脅威を低減し、温暖化に向う地球という不安な見通しを打ち砕こう。」
"With old friends and former foes, we'll work tirelessly to lessen the nuclear threat and roll back the specter of a warming planet."
オバマ政権はこの4年間で石炭火力発電所の閉鎖を進めてきましたが、こうした傾向は二期目に入っていっそう強まる見通しです。また従来通り、車の燃料効率基準を厳しくする傾向も変わらないとみられています。炭素税(carbon tax)については、共和党が優勢を占める上院での可決は不可能と思われますが、アメリカが巨額の財政赤字を抱えて「財政の崖」に直面する今、炭素税に関する議論が復活する可能性もあるかもしれません。
結論として、特に目新しい項目はないものの、連続性ある環境政策が取られることは概ね歓迎されているようです。選挙直前にニューヨークを襲ったハリケーンサンディによって、政治家にとっても一般市民にとっても気候変動が無視できない課題として再認識されることになったのではないでしょうか。

<参考>
国連環境計画 http://www.unep.org/Documents.Multilingual/Default.asp?DocumentID=556&ArticleID=6045&l=en
http://www.reuters.com/article/2012/11/07/us-usa-campaign-energy-companies-obama-idUSBRE8A60N920121107


環境翻訳コラム担当者紹介
環境コンサルタントを経て米国でサステイナビリティ研究を行った経験を活かし、環境に絞って翻訳活動を行っております。修士共同研究ではカリフォルニア州道路公団の依頼で景観計画を作成。サステイナブル・コミュニティに関する研究では代替エネルギーから建築、農業、教育まで幅広い分野を統合する試みに携わりました。調査→分析→報告/発表という一連の流れの中で、必要に応じて関連分野の情報収集を行うなど、環境に関わる各分野に適した正確な翻訳を行います。
株式会社高橋翻訳事務所 
環境翻訳  担当:Y.M.