薬の特許期間はどのように決められているのか | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

プロ翻訳家による丁寧な翻訳で海外・国内のホットな話題を翻訳家の視点で書き綴っております。

こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)医学翻訳担当の平井と申します。

医学翻訳特許制度を簡単にいうと、「新しい物質や技術の発明者にそれらの使用を一定期間独占させ、研究開発に使った費用を回収する機会を保証する制度」となります。費用が回収できれば次のステップへの再投資が可能となり、技術はさらに発展することになるため、これが特許法の目的といえます。

薬の特許は、以前は作り方だけで認められていました。つまり製法特許です。しかし、同じ薬でも作り方は何種類もあるのが普通なので、しばらくすると、違う製法の同じ薬がゾロゾロ出てきます。このゾロ製品は製法の違いだけを考えればよいので、開発費用はわずかで済みます。これでは誰も巨費を投じて薬を開発する気にはなりません。

そこで1967年から、薬そのものに特許が認められるようになりました。これが物質特許で、現在の薬の特許は物質特許や製法特許のほかに、用途や製剤に関するものもあり、その期間は出願から20年とされています。

薬以外の物質の場合は、特許が登録されるとその権利はただちに成立し、期間が満了するまで継続されます。ところが、薬の場合は事情が異なり、厚生労働省が有効性と安全性を確認するため、製造販売承認を出すまでに時間がかかります。その間は、その薬を作ることも売ることもできません。つまり、特許上の権利を行使できないことになります。厚生労働省に治験届を提出してから製造販売承認を得るまで、少なくとも7~8年はかかるので、薬の特許上の権利が大幅に制限されます。

同様の事情を抱えていた米国では、1984年に特許回復法案が成立し、薬の販売承認日から5年を限度として、開発期間中に失われた有効期限の回復を認めています。

日本でも1988年から、特許登録の日から製造販売承認されるまでの長さ(侵食期間)に応じて、特許の有効期間が延長、または回復(回復期間)されています。


医学翻訳 ・分子生物学翻訳 ・生化学翻訳コラム担当者紹介
大学や研究所で得た知識と経験を生かし、生命科学全般を対象に翻訳を手掛けております。最先端の技術内容に関する仕事が多いため、調査には十分な時間をかけた上で、読み手の立場を十分に配慮し、さらに原文のニュアンスや言葉のリズムを掴み、論理的で読みやすい翻訳文を提供できるよう努めています。
株式会社高橋翻訳事務所 
医学翻訳分子生物学翻訳生化学翻訳  担当:平井