医学界での組織染色の基本は草木染め | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。高橋翻訳事務所(http://goo.gl/25cZv)医学翻訳担当の平井と申します。

医学翻訳医学用語として使われている「染色(staining)」という言葉から、着物などの染物を想像される方もいるのではないでしょうか。たしかに染色とは布や革に色素をつけることです。実は人間の組織の染色でも、使う色素の種類や発色させる反応は布や革の染色と共通するものがほとんどです。

染色の基本であるヘマトキシリン・エオジン染色(hematoxylin-eosin staining)は、組織を「ピンクと紫の世界」に変えるものです。この染色に使うヘマトキシリンは、アカミノキ(Logwood、Haematoxylum campechianum)という木から抽出される色素なのです。世界中の病院や医科大学の部屋で、毎日、草木染めが行われているわけですね。ちなみに、Haematoxylumの語源はHaemato(血)とXylon(材)で、その名の通り木材の中心部が血のように赤い色をしています。ヘマトキシリンは木綿や麻、絹などの染色に用いられるほか、白髪染めの材料としても使われています。

また、バイオリンの弓に使われるバルナンブコという木も中心部にヘマトキシリンを含んでいます。この木を研究したところ、ヘマトキシリンには色をつけるほかに、木材の振動吸収力を低下させる作用があることが解明されたそうです。

ムチカルミン染色は、大腸の粘膜を染めたものです。杯細胞と呼ばれる細胞になる粘液が、ムチカルミン色素で薄紅色に染まります。この色素はエンジムシ(コチニールカイガラムシ:Dactylopius coccus)というサボテンにつく虫から抽出されます。虫の体液といわれると嫌がられますが、カルミンはコチニールという天然着色料として、布地の染色はもちろん、食品や口紅などの化粧品にも使われているのです。この色素の歴史は古く、アステカやインカ帝国で養殖されて、染料として使われていました。その後、メキシコを統治したスペインによって輸入されることになります。美しい染料というのは、昔から人々を魅了したわけですね。


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