土壌(soil)と法則(regulation):倒木に関する法的責任(liability) | 高橋翻訳事務所スタッフリレーブログ

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こんにちは。(株)高橋翻訳 事務所 環境翻訳 担当のY.M.です。



夏の間のハリケーン(hurricane)で庭の樫の木(oak)が隣家の庭にまたがって倒れるというできごとがありました。幸い隣家の家屋や車、もちろん人に被害はなかったのですが、こちらも焦って業者を手配しました。


そこで初めて知ったのですが、我が家のあるアメリカ・メリーランド州(Maryland)では、倒れた木は倒れた先の土地の所有者がそれぞれ処理責任を持つということです。つまり、自分の土地の境界線(property line)にある木が倒れて大部分が隣家に着地したとしたら、その「大部分」を処理するのは隣家の責任ということになります。



ずいぶん無責任な法則だと思ってさらに聞いてみたところ、これはメリーランド州の特殊な土壌環境(soil environment)に起因するものだとのこと。我が家が位置するのはメリーランド州でも地学上(geologicallly)Piedmont Plateau Province と呼ばれる地域で、片岩(schist)、片麻岩(gneiss)、斑れい岩(gabbro)といった堆積変成岩(metamorphosed sedimentary)と火成岩(igneous rock)を基岩(bed rock)としています。しかし表層土(surface soil; A horizon)の下の層位(horizon)である下層土(subsoil; B horizon) は、州ほぼ全域で粘土質層(clay)となっています。この粘土のために、植物は根を垂直方向よりも水平方向に張るため、降水(precipitation)などで土壌が緩むと健康な木であっても倒れることになるそうです。



自然の力には逆らえない(不可抗力;Acts of God)、ということで、メリーランド州では全米でも珍しい法則が出来上がったということです。ただし、樹木の所有者が樹木の衰弱あるいは枯死を知っていた場合、または隣家が事前に書面で「倒木等による被害防止のための樹木の撤去または維持」を要求していた場合は別で、この場合は倒木の撤去はもちろん、家屋への被害等の賠償責任は木があった側の責任になります。



それにしても、どこへ行っても緑多いメリーランド州ならではの法則、合理的なアメリカ人気質を垣間見た気がしました。



(株)高橋翻訳事務所 環境翻訳担当  Y.M.