新型コロナウイルスの感染拡大が地方でも加速し始め、観光支援事業『Go To トラベル』キャンペーンをスタートさせたばかりの政府が対応に苦慮しているそうだ。
コロナ禍で傷ついた経済の再生を重視する立場から、現時点でキャンペーンを継続する方針は変えていないが、感染爆発を懸念する声が地方はもとより政府内からも上がり、逆風は強まる一方なようなのだ。
「観光業は瀕死の状態だ。少しでも経済を動かそうという思いだ。」と旗振り役の菅官房長官は30日のテレビ番組収録で、キャンペーンの意義を力説し、その後の記者会見で事業内容を見直す可能性を問われ、「現在の枠組みを適切に運用していきたい。」と改めて否定したらしい。
菅長官がキャンペーン継続にこだわる背景には観光産業の苦境があり、国内の新幹線と飛行機の旅客数は前年比3割前後、ホテルの稼働率は同1割前後に落ち込んでいる状況だという。
折りしも内閣府が30日公表した2020年度の国内総生産(GDP)成長率の試算は、実質で前年度比マイナス4.5%の大幅減となったそうだ。
さらに、政府内も一枚岩ではなくなっているようで、閣僚の一人は「凍結を考えてもいい。」と漏らしたとか、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は30日の参院国土交通委員会で、「必要であれば『県を越えた移動は少し控えた方がいい』、あるいは『大丈夫じゃないか』と申し上げたい。」と発言したりという状況なようだ。
キャンペーン継続の是非に関し中立の立場を強調したものの、見直しの可能性に言及せずにはいられなかったという。
ここへきて感染者が急増している自治体からも慎重な声が出ているようで、政権中枢に近い松井一郎大阪市長は会見で「今移動して今観光に行く必要はない。」と述べ、政府がこのような状況であえて全国で観光旅行を後押しすることに疑問を呈したという。
県民が沖縄旅行中に感染したとされる福井県関係者も「キャンペーンは早すぎた。」と語ったそうだ。
野党は政府批判を強めており、国民民主党の玉木雄一郎代表は「感染は新しい局面に入った。『Go To』キャンペーンと夏休みで、8月が感染爆発月間になる可能性がある。」と憂慮し、「政府は無策だ。」とこき下ろしたという。
野党は当然の反応だと思うが、問題は政府内が一枚岩になっていない事である。
今さらどうこう言うくらいなら、キャンペーンが閣内で議論された際に問題点を指摘できなかったのか?
少なくとも、素人でもあのタイミングであれば腰を引くぐらいの状況だったのだから、政府内でそれを感じていなかったとしたらそれこそが大問題である。
新型コロナウイルス感染症が夏休みもとらずに拡大しているのだから、政治家が夏休みをとっている場合ではないと思うのだが…。