$hashikawa's blog


久しぶりなブログテーマ「Book」の更新は、
友人の推薦で読んだ村上春樹氏のノンフィクション「アンダーグラウンド」

日本中を震撼させた、オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者や関係者62名に、
取材とインタビューを行いまとめた、700ページを超えるルポルタージュです。


まず、18年前のこの事件のことを何も知らなかったのだなと。
当時まだ12歳だった私は、漠然とただ怖いと感じているだけでした。

あとは、宗教って複雑なのかなということと、メディアが伝える教祖のインパクト。
でも、地下鉄車内でのアナウンスが変わったのはなんとなく印象に残っています。

※ 今では普通に流れている「不審物には触らず...」というアナウンスは、
確か、この事件の後から流されるようになりました。


実行犯によって散布される前後の様子のリアルさが、読んでいて何より強烈です。
そして、まき込まれた人々にとって事件当日その瞬間までがいかに普段通りの日常だったのか。

被害者に共通するのが、少しの違和感では危険を感じることができず、
明らかな非常事態になるまでは、異変を疑うことができなかったということ。

そして、その後の後遺症や精神的、肉体的な治療生活の苦しみ、
失われた多くの命や遺族の心の痛みは、読んでいて胸が張り裂けるような苦悶です。


簡単には綴れない内容で、やはり読むタイミングとしてのこちらの精神状態も難しい。
辛い気持ちになるのは避けられないし、地下鉄に乗るのが少し怖くなったりもします。

裁判も進み、法的な制裁も進んでいる事件で、その2ヶ月前に起こった阪神大震災や、
9.11、3.11などと並ぶ、命の在り方に思惟を巡らす目を背けられない歴史上の事実です。


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作品としてだけではなく、脚色されることのないリアルで鮮明な資料として、
夜と霧」などと同じような最低限の教養として今後100年読み継がれるべき1冊です。