自由至上主義をもって論を進める、自己所有権について書かれた、
第3章「私は私のものか? -リバタリアニズム-」
「自分を所有するのは誰なのか」という、いかにも哲学的な視点で、
リバタリアンの論理への反論からその回答へと、深い見解で鋭く展開します。
ビル・ゲイツやマイケル・ジョーダンを取り上げての「所得や富の再配分」についてや、
臓器売買や幇助自殺など、極端な例で自己所有権のあり方を論議します。
そして、徴兵・傭兵・志願兵などの兵役制度と代理出産について書かれた、
第4章「雇われ助っ人 -市場と倫理-」
戦争で戦うことと子供を産む行為、これらを金銭の授受をもって行うことの倫理について考察します。
互いに利益をもたらし、だれも傷付けない両者間での取引はどこまで許容されるのか。
自由市場に於ける正義をめぐる議論で、我々がくだす選択の自由の範囲、
お金では買えない美徳やより高級なものは存在するのかという問題に向き合います。
終盤部分は、少しアメリカ的な発想に傾き過ぎている感もありますが、
重厚な議論で知的興奮が味わえる、実に貴重な文献です。
「暴走する路面電車」の話や「アフガニスタンのヤギ飼い」の話、
最大幸福原理で効用を最大化する「功利主義」の視点で見る「救命ボートの漂流」の話。
より多くの命を救う為に避けることができない1人の犠牲を出すのは正義かなど、
究極の選択や道徳のジレンマについて書かれた第1章(約50頁)だけでも是非読んでみてください。
その考察や論考を楽しむという、哲学好きにはたまらない是非オススメの一冊です。
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70万部に迫る大ベストセラー。
帯付きver.もどうぞ。