「非実在青少年」規制問題は1991年有害コミック騒動の悪夢の再来 | 権力とマイノリティ

「非実在青少年」規制問題は1991年有害コミック騒動の悪夢の再来

今から20年前の1990年、和歌山県の女性らが中心となり「コミック本から子どもを守る会」が結成され、マンガ雑誌の過激な性表現や暴力描写を規制すべき、という署名運動を展開しました。この動きを受けて全国各地のPTAなどの親の会に、次々賛同が広がった。その様子はマスコミを通じて知られることになり、1991年には東京都議会が「有害図書類の規制に関する決議」を採択し、青少年健全育成条例の規制強化に乗り出しました。
 当時与党の自民党「子供向けポルノコミック等対策議員懇話会」では、業界関係者を招き、自主規制の現状について説明する機会がありました。

 そうした動きに対して市民の間から、出版社だけでなく、フェミニストや子どもの人権確立を求める活動家など、幅広い会員から構成されるゆるやかなネットワーク「『有害』コミック問題を考える会」が、集会を開催し、規制を疑問視する運動が広がった。そして1992年には、マンガ家・編集者・書店主らによって「コミック表現の自由を守る会」が結成されたのです。代表は石ノ森章太郎、他に里中満智子など。

 こうした動きの中で行われた集会で交わされた論議は、コミックの「有害図書」指定を、法律や条例で規制するのは、憲法で保障された言論の自由に反するのではないか。あるいは、女性差別にあたる過激な性表現は、差別助長に繋がらないのか。性表現の増殖は実は、性犯罪の抑止になるなど、様々な立場の人たちの議論が活発に行われました。

 結局、この有害コミック騒動以降、出版側の自主規制として、例えばコンビニでも成人雑誌コーナーがあるように「成人向け・18歳未満禁止」というゾーニングマークが設けられることになりました。現在、全国各地の青少年健全育成条例に基づき、「有害図書指定」は行われている。なお「図書類」の中には、マンガ雑誌の他にゲームなども含まれる。

 1999(平成11)年に制定された「児童買春及び児童ポルノ禁止法」で、実際に子どもの虐待にあたる写真類の製造や販売は禁止されたが、「単純所持」については禁止されていない。写真や映像などの「単純所持」についても罰則などを求めるべきだという議論が現在も続いています。

 そして、1991年から20年の歳月が流れ、今年再度、東京都青少年健全育成条例の改正で「非実在青少年」というマンガやコミック、ゲームなど現実には存在しない表現に対して、規制を強化するという条例改正案が2月24日に東京都で発表されました。
 これは今年1月14日に都知事に提出された、東京都青少年問題協議会の「メディア社会が拡がる中での青少年の健全育成について」の答申を受け、条例改正案が2月24日に都議会に出されたものです。

 石原慎太郎都知事は、3月2日の都議会において、以下のような答弁をしている。
「児童ポルノや子どもへの強姦などを描いた漫画の蔓延を、見て楽しむだけなら個人の自由である、いかなる内容であっても表現の自由であると許容することは、自由の履き違い。保護者が幼い子どもを性的写真集の被写体として売り渡す行為は、子どもを使って自己の欲望や利益を満たそうとする、卑劣であるまじき下劣な行為である。青少年健全育成条例を改正し、児童ポルノの根絶とこの種の図書類の蔓延の防止に向けて、現存のおぞましい状況にこの東京から決別していきたい」