資料・都議会議事録「非実在青少年」規制 | 権力とマイノリティ

資料・都議会議事録「非実在青少年」規制

平成二十二年東京都議会会議録第二号〔速報版〕より
平成二十二年三月二日(火曜日)

〇百二十三番(大沢昇君) 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。

 次に、青少年育成について伺います。
 現在、携帯電話は多くの子どもたちに普及していますが、保護者の多くがそうした子どもたちの利用状況を把握していないことも明らかになっています。
 
 そして、子どもたちと保護者に携帯電話やPHSを利用した感想を聞いたところ、友人とのコミュニケーションがふえたなど、よい環境も感じていますが、保護者は暴力的、性的、反社会的な内容を含むサイトにアクセスすることを心配し、子どもたちのインターネット利用に不安を感じてもいます。
 

 都は今回、状況が深刻化している現状認識から、フィルタリングサービス解除手続の厳格化や推奨制度の創設を行うとしています。
 一方、昨年四月に施行した青少年インターネット環境整備法は、子どもたちがインターネットを適切に活用する能力を育成していく考え方に立っています。私たちも、子どもたちに段階的に有害情報への対応方法を教え、情報を見る目を育てる情報モラル教育、そして情報を使いこなす力を持つ情報リテラシー教育を重視すべきと考えます。子どもたちの情報モラルと情報リテラシーの向上への取り組みについて、都の所見を伺います。

 
 また、携帯電話を持っている小学六年生の約半数は、保護者から持つように勧められたものです。このうち、携帯電話を利用するに当たってのルールを決めていない家庭が、小学六年生で約二割、中学二年生で約三割となっています。
 都では、平成十九年三月から、ネットなどのトラブルから子どもたちを守るため、親子で家庭のルールをつくるファミリeルール講座の実施をしています。しかし、携帯電話のルールがない、いまだ理解が不十分な家庭がふえているのが現状で、しかも、こうした保護者は講座に出席していません。
 そこで、講座に参加しない、あるいは参加できない保護者に対して、都はどのような取り組みを行い、事態を改善していくのでしょうか、都の所見を伺います。
 

 そして、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための青少年インターネット環境整備法の基本理念の一つは、国及び地方公共団体は、民間における自主的かつ主体的な取り組みを尊重していくというものです。そして、有害情報の例示については、第二条の四で示されている三つの情報となっています。
 都は民間における取り組みを尊重する立場ですが、今回の青少年健全育成条例改正案において新たに定義される違法、有害情報に関して、懸念を表明する人たちがおります。「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為を行い」の後につけ加えられる「犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」とは、どのような情報を想定しているのでしょうか。また、条例の運用によって広く解釈されることはないのでしょうか、都の所見を伺います。
 

 今回、都内における児童ポルノの根絶の機運醸成を議論するに当たって、私たちは児童買春、児童ポルノ法改正の動向を注目しております。都は、現在も国に青少年を守る施策の実現を提案していますが、要望するに当たっては、国会で議論となった、単純所持の問題で冤罪を生むのではないかといった懸念を払拭するための提案を行っていくべきと考えますが、都の所見を伺います。
 

 一昨年の秋、自分の娘の裸体の写真や動画を携帯電話のインターネットサイトに送信し、販売した母親らが、児童買春、児童ポルノ禁止法違反で宮城県警、警視庁に検挙されました。
 平成二十一年度には、ネットや携帯電話を利用した児童ポルノ事件により、八人が都内で検挙されています。このポルノグラフィーの被写体などを子どもに強要することは、児童虐待の中の性的虐待に当たります。
 
 ところで、都内の児童相談所で受けた児童虐待の相談、通告の件数は近年ふえ続け、平成二十年度は三千百五十七件と、十年前の四倍強となっております。その中でも、性的虐待の件数は九十五件あったそうですが、性的虐待については、子どもの心に大きな傷を残すと聞いており、性的虐待を受けた児童への対応が重要になります。
 こうした子どもたちの保護、回復、そして保護者に対する指導などについてどのように対応しているのか、都の所見を伺います。


〇青少年・治安対策本部長(倉田潤君) 
 三点のご質問についてお答えいたします。
 
 まず、家庭内のルールづくりを促進するための講座に参加できない保護者等に対する取り組みでありますが、都は、携帯電話やインターネット等の利用に関する家庭内でのルールづくりを促進するため、ファミリeルール講座を実施しております。
 
 保護者の受講機会の増加を図るため、来年度は、その実施規模の拡大や、就労等により平日の参加が困難な保護者に配慮した夜間、休日における受講機会の拡大などに取り組むこととしております。
 
 さらに、同講座への自発的参加が期待できない保護者層が存在することにかんがみ、携帯電話等事業者に、青少年が使用する携帯電話の契約時における、インターネット利用に伴う危険性等の説明を促すなど、広く保護者一般に対する啓発機会の拡大を図ることとしております。
 

 次に、青少年健全育成条例改正案における「犯罪若しくは被害を誘発することを容易にする情報」についてでありますが、この情報の典型例としては、犯罪の具体的な実行の呼びかけや、いわゆる援助交際の相手を求める書き込みを想定しております。
 また、いわゆる青少年インターネット環境整備法における青少年有害情報の定義、これは、インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報であって青少年の健全な育成を著しく阻害するものでありますが、この解釈を拡大するものではなく、その個別具体的な判断は、法と同様、事業者の判断にゆだねられているものであります。
 

 なお、この情報に係る規定は、法施行後も、フィルタリングにより除外されていないサイトを通じて青少年が犯罪被害に遭う事例が見られることを踏まえ、関係事業者に対し、青少年の被害防止に向けたフィルタリングの実効性確保に関する一層の取り組みを促すために置くものであります。
 
 次に、児童ポルノの単純所持の禁止に関する国への要請についてでありますが、第二十八期青少年問題協議会の答申においては、頒布や販売等の目的以外でのいわゆる単純所持について、処罰化の対象となる行為等の検討に当たっては、意図せざる所持が処罰の対象とならないよう配慮することは当然などとした上で、都において国に対し処罰化の実現に向けた迅速な取り組みを要望すべき旨が示されております。

 児童ポルノの単純所持に限らず、冤罪の絶無を期すべきことは当然であり、都としては、答申を踏まえ、国において処罰の対象となる行為等の定義について十分に検討するなど、冤罪の防止にも留意した上で、児童ポルノの根絶に向け、単純所持の処罰化を早期に実現するよう、国に対して求めてまいります。

〇百十三番(川井しげお君) 平成二十二年第一回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問いたします。

 次に、青少年健全育成条例の改正について伺います。
 
 近年、児童ポルノ蔓延を初め、大人が青少年を性的対象として扱うあしき風潮が顕著であり、都内でも、母親が金と引きかえに我が子の児童ポルノ写真を撮影させるという許しがたい事件が発生しています。このような風潮は、自己の欲望を満たすためには子どもの心身に傷を負わせ、犠牲にすることもいとわない、大人のエゴにほかなりません。

 
 また、水着姿の幼い子どもの局部を執拗に強調する写真集に、我が子を売り込んで金を得る保護者がいたり、子ども相手の強姦や近親相姦を描いた漫画など、容易に子どもの目に触れる状況にあることも憂慮されます。考えられないことだからね。
 
 今回の条例改正案は、こうした現況から青少年を守るためのものであると強く認識していますが、改正案に込めた知事の決意を伺います。
 次に、青少年のインターネット利用の環境整備についてでありますが、都は、国や他の自治体に先駆けてフィルタリングの普及と青少年への教育啓発に力を入れてきたものと承知しています。しかしながら、いじめや誹謗中傷、自分の裸の写真の掲示など、保護者の関知しないところで、青少年がインターネットを利用して、被害者のみならず加害者ともなる例もいまだ多く見られております。
 我が党としては、このような状況の改善のためには、青少年を監護する責任を負う保護者の役割が重要と考えますが、今回の条例改正案ではどのように対応しようと考えているのか伺っておきます。

〇知事(石原慎太郎君) 川井しげお議員の代表質問にお答えいたします。
 次いで、青少年健全育成条例の改正についてでありますが、児童ポルノや子どもへの強姦などを描いた漫画の蔓延を、見て楽しむだけなら個人の自由である、いかなる内容であっても表現の自由であると許容することは、これらの自由の履き違えでまさにありまして、青少年を守り育てる大人としての責任と自覚を欠いた未成熟な人間の自己保身にほかならないと思います。

 
 また、保護者が幼い子どもを性的写真集の被写体として売り渡す行為も、子どもを使って自己の欲望や利益を満たそうとする、大人として親として、卑劣というかあるまじき下劣な行為であると思います。
 このような、児童ポルノや青少年をみだりに性の対象として扱う風潮から、次代を担う青少年を守らなければならないと思います。このため、青少年健全育成条例を改正し、児童ポルノの根絶とこの種の図書類の蔓延の防止に向けて、都が、都民、事業者と一体となって取り組み、現存のおぞましい状況にこの東京から決別していきたいと思っております。