浜岡原発は東海地震に耐えられるのか? | 権力とマイノリティ

浜岡原発は東海地震に耐えられるのか?

浜岡原発

 静岡にある中部電力・浜岡原発の運転停止を求める市民団体が、起こした訴訟に対して、静岡地裁は「東海地震の大きさは科学的根拠に基づいており、住民の生命・身体が侵害されることはない」と原告の請求を棄却した。

 科学的根拠・・・原告の科学的根拠と、裁判所の科学的根拠が、食い違っている。
「科学的根拠」っていう言葉に騙されてはいけない。権力が捏造する調査データというのは、たくさんある。

●中日新聞 10月26日 夕刊
【浜岡原発の運転停止認めず 静岡地裁「耐震性は確保」】
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007102602059498.html
 中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)が東海地震に耐えられるかを争点に、市民団体が1-4号機の運転差し止めを求めた訴訟の判決が二十六日、静岡地裁であった。 宮岡章裁判長は「中部電力が想定する東海地震の大きさは科学的根拠に基づいており、原子炉の運転によって原告らの生命、身体が侵害される具体的危険性は認められない」として原告の請求を棄却、並行審理された仮処分申請も却下した。市民団体は控訴し、仮処分についても東京高裁に即時抗告した。

 判決理由で、宮岡裁判長は「想定東海地震に関する中央防災会議のモデルは科学的根拠に基づいている」と指摘。「中電が定めた、最大の地震が起こす揺れの基準地震動は妥当で、設計上の安全余裕は十分に確保されている」と述べた。
 柏崎刈羽原発で想定を二・五倍上回る揺れを観測した七月の新潟県中越沖地震の後でもあり、原発の耐震性に対する司法判断が注目されたが、仮処分の決定理由で、トラブルを起こした柏崎刈羽原発についても、炉心溶融などの重大事故は防止され、安全性は確保されていたと述べた。

 訴訟の争点は(1)中電が想定した地震の規模(2)原発の耐震性(3)老朽化による強度低下-の三点。

判決骨子

 判決は地震の規模について「十分安全側に立った想定がされている」と妥当性を認定。「揺れが大きな、より厳しい条件を想定すべきだ」と主張していた原告側の訴えを全面的に退けた。耐震性については「余裕を持って設計されており、想定に近い揺れに襲われても直ちに耐震安全上、問題が生じるものではない」とした。昨年九月の国の耐震指針の改定についても「耐震安全性の向上を求めたもので旧指針に基づく安全評価を否定するものではない」と旧指針の信頼性を認定。1-4号機は新指針に照らした国の安全確認を終えていないが「耐震安全上、問題はない」と判断した。

 老朽化への対策についても「機器のひび割れなどを事前に予測し、部品を交換して安全性を確保することは可能で、合理的」とした。
 原発の運転や設置をめぐる訴訟で住民側が勝訴したのは、〇三年一月の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の設置許可無効(最高裁で破棄)と、昨年三月の北陸電力志原発(石川県志賀町)の運転差し止めの二例だった。

<浜岡原子力発電所> 中部電力が唯一の原発として静岡県御前崎市に建設し5基ある。1-4号機は沸騰水型、5号機は改良型沸騰水型で1976年から2005年にそれぞれ営業運転を始めた。総出力は約500万キロワットで国内原発では東京電力柏崎刈羽原発に次いで2番目。1号機は01年、2号機は04年から定期点検を理由に稼働停止中。4号機も今年9月から定期点検に入り現在稼働しているのは3、5号機。


■声明 浜岡原発運転差し止め訴訟不当判決に抗議する

2007年10月26日
原子力資料情報室


 本日、静岡地方裁判所民事第1部は、原告住民の訴えを却下する判決を下した。裁判では原告側は耐震安全性の不備や原発震災の危険を具体的に主張したが、判決は安全評価や機器のチェックが国の指示にしたいがって行なわれていれば、それでよしとする極めて表面的なものであり、不当判決と言わざるを得ない。

 さらに、浅い判断と言わざるを得ない点が多数見られる。
・判決直前に明らかになった1000年周期でM9クラスの地震が起きる可能性についても全く無視し、「十分に安全側にたった地震動予測がされているものと認められる」としている。
・中越沖地震では同時多発的に配管類の変形や建物の亀裂などが起きたが、判決は「同時多発的に配管類の変形や破断が発生する現実的な可能性があるとはいえない」と現実を無視する判断を下している。
・経年劣化についても、SCCがどこで発生するか分からないにもかかわらず、また、全てが点検できるわけでもないにも係らず、点検・検査を行い適宜交換しているから安全が確保されていると判断している、など被告側の主張を鵜呑みにした判断が行なわれているといわざるを得ない。


 5年余にわたって原告は、想定すべき地震の規模と起こり方、地震時の共通要因故障、施設の安全余裕性、進行している重要機器の老朽化の危険性、膨大な同時多発故障などをめぐって主張を展開してきた。これは判決が言うような「抽象的に想定可能なあらゆる事象」を主張してきたのではなく、具体的に危険性を指摘してきたのである。

 起こりうる事象に対して、起こった場合の甚大な被害を想定し、それを避けるという予防原則こそが、これからの人類社会の規範でなければならないと、私たちは考える。
 この判決によって、住民・市民の生命・健康を守ることは決してできないであろう。原告ならびに周辺住民も、これによって原発の安全性が示されたとはとうてい言えず、原発震災を招く判決と言わざるを得ない。


●判決骨子PDFはこちら
http://cnic.jp/files/071026hanketsukosshi.pdf

原子力資料情報室 URL: http://cnic.jp/