命は金で買えるのか? ドラマ「医龍2」 | 権力とマイノリティ

命は金で買えるのか? ドラマ「医龍2」

■原作は永井明原案の「医龍」
 医療ドラマは「ER」ファンなもので、日本の医療ドラマは、いまいちねぇ~と思っていたのだが、木曜日に観たフジテレビの「医龍2」は、エンターテイメントとしておもしろかった。
 初回は2時間半枠で、充分に見応えがある。原作はマンガ「医龍~Tesm Medical Dragon~」。原作・乃木坂太郎、原案・永井明。去年、医龍がドラマ化されているが、この秋からの続編は、オリジナル脚本。永井明は医師で、その後医療ジャーナリスト・作家として活躍。2004年に死去。
 
 あっさり、あらすじだけ記しておく。
 心臓外科医の朝田龍太郎(坂口憲二)を中心としたチームドラゴンが、大学病院で再結成されて、心臓病の女性が手術をしなければならないのだが、長年の不妊治療でやっと授かった子どもと母親ともども、助けなければならない。チームドラゴンが考えた秘策とは、妊娠9カ月で帝王切開して、その後、心臓手術に移行するという。帝王切開は腰椎麻酔だから意識はあるので、産まれた子どもを母親は抱くことができる。引き続き行われる心臓手術は、当然、全身麻酔。

 心臓手術の術式までよく知らないが、バチスタっていうそうだ。CGで冠動脈がどうしたこうしたと説明しまっくっていた。たぶん医療監修がついているだろうな、と思っていたが、案の定だ。それに手術の際に、ふつう執刀医だけに目が向くけど、麻酔科医の役割を重要視していたから、その辺もなかなかと思っていたが、原案が元医師だと知り、おもわず納得。 

 ドラマだからいいけど、どうみてもあり得ない話しがある。
 当日、大学病院での公開手術があり、母子の出産と手術は提携病院で行われる。患者の急変があって、公開手術は1人じゃなくて、もう1人の外科医とリレー式でやった。

 提携病院での手術の手はずを整えた医療ジャーナリストと名のる片岡一美(内田有紀)は、実は外資の手先だった、というのがオチだ。このオチが、いちばんリアリティがあるよな~と妙に感心したのだ。

 実際、日本の「金になる医療が出来る病院」は、米国資本に買収されようとしているし、国民皆保険制度だって、実は危機に瀕している。下手なドキュメンタリーより、ドラマの方が真実を見抜いて、表現できる強みがあるよなぁ~。フジテレビって、こういうのけっこう上手いんだよな。

■「テーマは医療と金」と語るプロデューサー
 ・・・とか思っていたら、プロデューサーは、マイケル・ムーアの映画「シッコ」を意識していた。やっぱり。以下、フジテレビのサイトより引用。
http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2007/07-230.html 

 長部聡介プロデューサー(フジテレビドラマ制作センター)は「前回は大学病院という閉鎖的な世界で教授を頂点とする権威主義と戦いながら患者に向き合う朝田と彼のチームの活躍を描きました。今回はその狭い世界を飛び出して、今、世の中で現実に起こっているさまざまな医療問題を相手に朝田とそのチームが戦う姿を描きます。

 テーマは“医療と金”です。お金のある人間だけがより高度な治療を受けられるという自由診療の波はすぐそこまできています。マイケル・ムーアの新作「シッコ」で描かれている世界は明日の日本の現実かもしれません。病院も医療法の改正に伴い経営的に自立していないと倒産、乗っ取りの危機にさらされてしまいます。病院といえども今や、民間企業と同じ状況下にあるといっても過言ではありません。

 この厳しい現実の中で、天才心臓外科医、朝田が心臓移植というあらたな目標に向かって突き進みます。医療は患者を救うためにあるという朝田の信念のもとに新しいチームが作られていくのです。オリジナルストーリーを作ることは大変ですがかつてない手ごたえを感じています。坂口さんをはじめとする強烈な個性を持つキャスト陣もさらにパワーアップしています。今、もっとも関心がもたれているテーマを前シリーズよりさらに大きなスケ—ルで描くハイテンションなエンターテインメントとして楽しんでいただけると確信しています」と語っています。