米国大統領選 ヒラリー・クリントンの国民皆保険導入の真相 | 権力とマイノリティ

米国大統領選 ヒラリー・クリントンの国民皆保険導入の真相

マイケル・ムーア

■医療「構造改革」は国民皆保険の解体への道
 日本でも8月25日から公開された、マイケル・ムーア監督の映画「シッコ Sicko」は、日本の医療「構造改革」がめざしている姿を、わかりやすく描いているといわれる。この映画をひとつの素材にして、わたしは医療保険を民営化することの危険性について、広く国民的な議論が起こることを期待している。ずっと観たいと思っているのだが、まだ映画を観ることが、出来ないでいるのがもどかしい。ただ、この映画の評論や感想などは、ウェブ上ではいろいろアップされて始めている。

 ヒラリー・クリントン上院議員は、大統領夫人の時に、国民医療皆保険の導入をめざしたが失敗した。なぜなら、米国の保険会社はヒラリー氏の大胆な政策提言を食い止めるために、一億ドルものお金をかけて妨害したからだと、マイケル・ムーア氏は証言している。権力の中枢に上り詰めるためには、政治的な妥協や取り引きを様々しなければならない。初心貫徹が、いかに難しいかを考えさせられるエピソードだ。

●朝日新聞 09月18日12時33分
【ヒラリー氏「国民皆保険の導入めざす」医療制度改革】
http://www.asahi.com/international/update/0918/TKY200709180187.html?ref=rss
 米大統領選で民主党の有力な立候補予定者のヒラリー・クリントン上院議員は17日、皆保険制の導入をめざした医療制度改革案を発表した。個人や中小企業の税負担を軽減して保険料を補助し、財源は医療歳出の効率化などを当て込んでいる。

 医療費の上昇を背景に米国の無保険者は6年続けて増えており、昨年は前年比約5%増の約4700万人にのぼり、人口の約16%を占める。経済分野で大統領選の焦点になっており、ほかの民主党候補予定者も皆保険を視野に入れた計画を打ち出している。
 ヒラリー氏は90年代前半、大統領夫人として制度改革を率先して行い、失敗した経緯があり、注目されていた。今回は教訓を生かして「比較的簡素だが、大胆さは変わらない」と話した。

■マイケル・ムーアはヒラリーに期待していない
「TUP速報」のメールマガジンより、ヒラリー・クリントン氏に関するところだけ、引用します。なお、このインタビューの様子は「デモクラシー・ナウ!ジャパン」のサイトで見られます。
 http://democracynow.jp/stream/070618-1/index.shtml
【マイケル・ムーアが語る映画「Sicko」制作の背景】
・エイミー・グッドマンによるマイケル・ムーアのインタビュー(2007年6月18日)

 アメリカ国民の税金を湯水のように使ってイラク戦争を続行するブッシュ政権。世界一裕福なアメリカですが、先進国では世界で唯一国民健康保険制度がありません。6月下旬にマイケル・ムーアによるドキュメンタリー映画「Sicko(病人)」が初公開され、福祉制度の破綻に苦しむアメリカ庶民の実情が赤裸々に暴露されました。

 またもや全米に大旋風を巻き起こしているマイケル・ムーアに「デモクラシー・ナウ!」のエイミー・グッドマンが6月18日(月)に一時間のインタビューを行いました。そのトランスクリプトの翻訳をお届けします。


エイミー・グッドマン:あなたはヒラリー・クリントンについて、彼女がビル・クリントン大統領のもとで試みようとしたことについて触れていますね。彼女が何を試みたのかを説明してください。

マイケル・ムーア:そうですね。彼女は14年前にとても勇気のあることを試みたと思います。彼女は皆のためのヘルスヘアがあるべきだ、既存症状に対する制限をなくすべきだ、収入の高低によらず、職種によらず、なんであれ皆が保障されるべきだと発言しました。彼女の行動は大変大胆なものでした。
 その結果として彼女はめちゃくちゃにされてしまったのです。いいですか、彼女をくいとめるために彼らは一億ドルのお金をかけたんですからね。

エイミー・グッドマン:それでも巨大な保険会社は気に入っていたわけですよね。なぜなら彼女はビッグ・ファイブ企業を保護しようとしたからです。彼女が保険会社をすっかり排除したら、単一支払い制度をアメリカ国民にもっと明確に説明することができたはずだという意見があります。

マイケル・ムーア:それが彼女の間違いだったのです。彼女は丸ごと取り組むことを怠った、この問題でやらなければならないことすべてを最後まで追求しなかった。実際に、同じ問題だったわけです。
 もうひとつの例をあげるなら、民主党がね、もう、ドリルでももっていって奴らの、この、もう、何かしてやりたくなっちゃうでしょう。だって、彼らの心は、まぁ、まともなところに行っているんだけど。分かる? それとおんなじで、ヒラリーの心も正しいところにあると思う。

 彼女はアメリカ国民みんなを保障したいと考えているんだけど、でも保険企業を根本的に排除することができないんだったら、じゃあ、ちょっとした取引でもしましょうか、というわけですよ。それって今エドワードが提案しているのに似ています。

 彼女は、少なくとも去年の議会で、リック・サントロムに次いでヘルス企業から受け取っている献金金額は第二位を占めていました。彼はもういませんから、現在彼女がナンバーワンかもしれません。彼女はこのように、企業が彼女のポケットに入り込み、彼女が彼らのポケットに入り込んでいる、そのような姿を見るのは残念でなりません。彼女にはあまり期待していません。