徒然なるままに、寺尾聰日記『半落ち』 | 権力とマイノリティ

徒然なるままに、寺尾聰日記『半落ち』

半落ち 寺尾聰  半落ち 柴田恭兵  半落ち 原作

 このところ、レンタルDVDで寺尾聰の主演映画を観まくっているので、その印象を綴っておきたい。『博士の愛した数式』(2006年)から、とりあえず徐々に年代を降りていくことにする。
 ・・・ということで『半落ち』(2004年)について。ある時、わたしが寺尾聰を話題にしていたとき、その友人は「いま若い人たち(団塊ジュニア)の間で、すごく人気があるのよぉー」と話していた。へぇ~!「知らない? 『半落ち』っていう映画」と聞かれた。

映画「半落ち」公式サイトより
 以下、「あらすじ」の引用です。
「私、梶聡一郎(寺尾聰)は、3日前、妻の啓子(原田美枝子)を、自宅で首を絞めて、殺しました」
 梶聡一郎が最寄の警察署に出頭してきた時、捜査一課強行犯指導官、志木和正(柴田恭兵)は、連続少女暴行犯人の自宅を朝駆けで急襲する最中だった。梶の取調べを命じられて、何ヶ月も追ってきたヤマから最後の最後で引き剥がされ、警察署へUターンする志木の胸中に去来する複雑な思い。
 半年前、アルツハイマー病を発症した啓子の看病の為、自ら刑事を辞して警察学校で後進の指導にあたり、広く敬愛を集めてきた梶が、なぜ殺人を犯したのか。取調室で向き合う梶の視線の奥が、あまりに澄んでいることに驚く志木。
 7年前に一人息子の俊哉を急性骨髄性白血病で14歳の誕生日を待たずに亡くし、寄り添うように生きてきた夫婦に、一体何があったのか。“来るべき日”を待ちわびる梶の、拘置所での、贖罪と希望への祈りを捧げる日々。どんな犠牲を払い、誹りを受けようとも、あと1年だけ生きようとしている梶の人生の〈真実〉とは !?

■生と死をめぐるミステリー映画
 先に原作・横山秀夫著『半落ち』(講談社文庫)を読んでしまったもので、きわめてあっさりした映画に仕上がっている、というのがわたしの感想。
 警察と検察・裁判所、そしてマスコミをめぐる攻防戦、それに関わる人びとの背景が、原作には描かれています。新聞社の事件記者だったジャーナリスト出身の作家ならではのミステリー作品。若年性アルツハイマー・認知(痴呆)症や白血病など、私たちの生命をめぐるドラマなので、いろいろ話題性にとんだ映画であることは、間違いありません。
 原作では直接、主人公の梶が描写されることはありません。その寡黙な主人公を演じた寺尾聰の存在感は、やはりなかなか「くせもの」。そのしぐさ、まなざしなど「性格俳優」ならではの、迫力の演技でした。

■ロケをめぐる話題
 事件が起きた舞台は、群馬県高崎付近ですが・・・。
 映画のロケーションについては、いろいろ手を尽くしたことがわかります。例えば、県警本部は高崎市役所。検察は埼玉県庁。裁判所は茨城県三の丸庁舎。所轄の警察は富岡市役所。東洋新聞(どうもわたしが映画を見る限り、毎日新聞とおぼしき…)高崎支局は、前橋住宅供給公社。イチョウ並木は、仙台の宮城県庁付近。紅葉シーンは水上諏訪峡。そういえば、「空白の2日間」に関するシーンでは、新宿・歌舞伎町も登場します。