ポケットの中に

いつも

ウリムとトムミムを入れていた、

あの頃から10年、早!

 

 

 

時間は幻想というけど

ほんと、もはや全てが夢だけど

 

 

 

最近は、なんだか

あの頃と似た感覚が時々ある。

 

 

だからなのか どうなのか

 

先日、何年ぶりだろ

小さな、安い石を衝動買いしました。

赤いタンブル。

 

 

手のひらに乗せて、

コロコロしていると

まるでウジャリ豆のよう。

 

たとえばこの中に、

0と1の膨大なデータが内蔵されていて

 

ビッグバンから 全宇宙、

地球、国、日本、私と、私じゃない人、、

全てのデータが完了してそこにある。

 

 

コロコロしながら

 

チラチラ透けてみえる

ライムグリーンの数字の羅列を眺めては

 

一体、どうしてこの中で「リアル」まんきつ出来ていたのか。と

首をひねる。

兄さんは隣でHAHAHAと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ。

終わってるんだから、終わらせておいで。

ダイジョーブ、一緒にいるから。

 

 

そこで私(あるいはあなた)は

兄さんのいるところ、光の大地に

しっかりと根をはり

 

兄さんの手の中、

小さな赤い石へ意識を向ける

 

ライムグリーンの数字の羅列が

 

より鮮明に見えてきて、

 

それはやがて映像となり

現れては消え、現れては消える

 

 

 

めまぐるしい映像に

うっかり眠りこむと、

 

私(あるいはあなた)は

映像の中のひとりが自分だと思い込んでしまう

 

 

そうして とうとう

映像のトリコになってしまい

すぐに何も、解らなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兄さんが

微笑みながら、キュッと

手のひらの小石を握る

 

すると 胸のあたりがキュッと苦しくなり、

 

それが合図となって、

わたし(あなた)は、ハッと目を醒ます。

 

(これ、本当に『私』だろうか )

 

 

 

 

 

 

静かに 静かに、
耳を澄まして

「声」のする方へ意識を向ける

 

還っておいで、と声がする。

 

 

映像が曖昧になり、

むしろテキトーにすら見え出して

あると思っていた何かが無く
失ったと信じた何かが突然見えてくる。



やがてそれは


激しい耳鳴りと共に
ライムグリーンのデータに戻る


データを超えて、
赤い小石の殻に突き当たる

そこを、突き抜けてゆくとき

データ保護の為に設定され、張り巡らされた、
とてつもない恐怖が襲いかかってくる

自分の叫び声で、
兄さんの声も聞こえず、方向も解らなくて
もう戻れない、と震え上がるけれど

震えたまま 祈り続けていたら



わたし(あなた)はいつの間にか

兄さんの前に立っていて
もうなにひとつ、恐いことは無い


 

手のひらには小さな赤い石があり、

 

コロコロしながら

 

チラチラ透けてみえる

ライムグリーンの数字の羅列を眺めては

 

一体、どうしてこの中で

「リアル」まんきつ出来ていたのか。と

首をひねる。

 

兄さんは隣でHAHAHAと笑う。

 

パチン、と指を鳴らしたら

 

赤い小石はフッと消えてしまったよ。

 

 

 

おしまい。(あるいははじまり)