「海の都の物語3」 | MS-GX200のガンプラ記録

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最近読み終えました、塩野七生著「海の都の物語」第3巻。


この巻では主に、13世紀から14世紀にかけての、ヴェネツィアとジェノヴァによる商業上対立を原因とする戦争が描かれています。


両国は同じ共和制ながらも全く違う性格を持った国でした。共通していたのは、交易を主軸に繁栄したこと。何度かに渡る戦争は、戦闘のみに注目すると、ほとんど引き分け。しかし、国の存亡については明暗が分かれました。


個人主義のジェノヴァは、超一流の船乗りを数多く輩出(後代のクリストファー・コロンブスなど)しました。しかし、共同で国を維持しようとする意識が欠けていたため内乱が頻発し、独立国としては14世紀末に姿を消してしまいます。


対するヴェネツィアは個人に権力が集中することを徹底して排除した政治システムをとります。また、政治を主導するプロ育成のために政治担当の貴族(無給)は原則世襲。結果、内乱も起きず衆愚政治にもなりませんでした。
こうした政府が自国交易とその安全を最優先させ、国を挙げて商人の育成(若者は親の商業の補助を通して外交、操船を実地で学ぶ)をしました。

他にも様々な内的外的要因がありましたが、結果ヴェネツィアは1000年もの間独立を維持したわけです。

キリスト教倫理観が西欧世界を支配した時代、

領土と覇権拡大が大国の関心事であった時代、

宗教対立が戦争の原因であった時代、

宗教、民族、人種の違いをものともしない、まさに国際商業都市であったヴェネツィアは特異中の特異であり、全世界史を通じてもこの点において古代ローマを除いては類をみない国家でした。


「ローマ人の物語」においてもそうですが、塩野先生の描く物語は、当時の世界にタイムスリップしたかのように、人が生き生きとしているように感じます。

今後も興味深く読み、学んでいきたいと思います。





歴史を知ること、そこから学ぶことの本当の意味は、年号や人物の名前を暗記することではありません。


人類の過去の行いは善悪を包括して全てが貴重な遺産です。時間は我々の意思によらずに進んでいきますが、社会は人間の意思が進めるものです。

よく現状を把握し、よく過去から学び、よき未来へと社会を繋げていきたいものですね。