様々に言われていますが、科学者としてのJ・ロバート・オッペンハイマーとはどういう人間だったのか。戦争との関わりはどういうものだったのか、という点で描かれた反戦的で核抑止力にも否定的に感じました。アメリカの第二次世界大戦におけるひとつの総括と、その後に続く冷戦への考察と思われます。

原爆による被害が描かれていない、と批判的な意見も多く見受けますが、直接的な描写はなくとも想起される映像であったり原爆の使用に呵責を覚えているコトから、ないとは言えないと思います。この物語に美談としての様相は一切感じるところはなく、英雄視されたオッペンハイマーの人としての醜さも顕わに描いています。宮崎駿の『風立ちぬ』もそうでしたが、戦争というものを直接的な表現を用いず描いて反戦の想いを感じるトコロがあったり、科学者・技術者としての欲求を戦争という時代の狂気に飲まれていったひとりの人間を描いたと思うのです。そういう意味ではこの作品たちは称賛されて然るべき、といえるのではないでしょうか。