邦題では”精霊”と訳していますが、原題が『The Banshees of Inisherin』なので、精霊というのが死を表すコトになるのだと思います。時代も1923年のアイルランド内戦を対岸で眺める存在しないイニシェリン島という人口も少ない田舎町が舞台。島の人々は誰もが顔見知りで娯楽もほとんどなく、島に一軒しかないパブでダラダラと飲むくらい。

そういう土地で老年の男二人の諍いを描いているコメディ、というかブラックユーモアなんでしょうね。急に「お前と絶好する」「話しかけたら指を切るぞ」と今まで仲良くしていた友人(と思っていた相手)からの宣言で戸惑う主人公とその回りの人々を描いています。ここだけ聞くと確かにコメディなのですが、実際に宣言したコルムは指を切って家に投げつけてくるし、島の警官や商店の婦人などは胸クソ悪くなるような人物として特出して描かれているしで、ただ笑っていられるばかりでもありませんでした。そしてそこから抜け出そうとする妹と島では馬鹿者扱いのドミニクの末路もまた、それぞれに考えさせられるものがあります。