開始早々、この作品がとある演劇の裏側を見せましょう、という劇中劇の入れ子構造であるコトを説明させられ面食らってしまいました。今までのウェス・アンダーソンの作品をいくつか観てきた中で、入れ子構造とはいえ現実とも幻想とも取れるような浮ついた不思議な世界観の中で、現実をガツンと叩かれたような気分です。
とはいえ、主軸となる劇作『アステロイド・シティ』の方は相変わらずの内容で、でも今までの作品の中で複雑さを感じる作品でもありました。鍵となるのは太平洋戦争後の1950年頃という時代背景なのかな、と。核実験を行うというオッペンハイマーと女優がマリリン・モンローまでは分かったのですが、他にも劇を作るシーンの劇作家や演出家、劇中の主人公であるスティーンベックのモデルが私には理解できず、どうにも今までの作品と違って混乱を招こうとしている印象がありました。
いつも通りの色合いと音楽と、彼の描くパステルでチャーミングの世界観は健在です。この世界観の中に溶け込みながら、それでも現実を私たちは見つめるよう、彼が描き出したものをゆっくりと受け取っていきたいと思います。