時々私も映画作品などでその要素に関して問う、芥川龍之介の『藪の中』、映画では黒澤明の『羅生門』を感じさせる内容ではありましたが、どちらかというと法廷ミステリー的な感じで進行していきます。証言が行き違って真相が見えない、というのではなく、進んでいく証言の中で被害者の妻サンドラがどこまでその死に関与していたかを推測だけでは裁けない、という感じだと思います。
作品自体の面白さは、淡々と進む中で人間の生を描いているところかと。事件の容疑者となったサンドラが自衛のために嘘をついていたコトであったり、実際の夫の関係について他人の語るものと自分が感じているもののギャップがあったりと、生々しさがあるトコロが人間らしさなのかと思います。事件の真相ではなくひとつの死から人間の生を描いているように思うのです。