グロテスクな世界をシュールな笑いで包んだ感じの作品だと感じます。ファンタジーとSFとの相まった世界観は現代的な『フランケンシュタイン』のひとつの側面とも思えます。
原作小説がある作品ですが、原題の『Poor Things』を翻訳した邦題ですが、Poorというのは「貧しい」のではなく「かわいそう」という哀れみを荒らしているトコロがこの作品のポイントなのかと。哀れみを感じるのは自分の立場がその上位にあり、見下す立場にある時の言葉です。物語は哀れに見える主人公のベラに魅了されて連れ去ったダンカンが、彼女の成長と自立の過程で立場が逆転していく様は、現代的な社会性の転換を表しているとも感じます。古い、旧態依然とした思考が壊されて新しい世界の自立がどういうものか、というのをこの作品は見せてくれているようにも思うのです。