サム・メンデスが半自伝的と言う作品で、彼の幼少期の時代に合わせた作品です。1980年代、サッチャー政権による弱者切り捨てとも呼ばれた、厳しい時代です。

前半はヒラリーという人物に焦点があたっていて、彼女が精神を病んでいるコトが知らされ、それでもスティーヴンという若い黒人男性と出会うことで心を取り戻し華やいでいく。けれども、根底にある病魔は彼女を蝕んでいく。しかし、作品は後半に視点がスティーヴンに変わっていく。彼がサッチャー政権の圧政の中で黒人差別を受けていたり、建築家の夢を諦めかけていたりとする中で、彼もヒラリーとの出会いで先に進もうとし、それを実現していく強さとヒラリーに寄り添う優しさを感じます。

何よりも最後に、映画館で働きながらも映画を観てこなかったヒラリーが、別れを告げたスティーヴンの助言をもとに映画を観るようになるのが良かったです。私が好きなサム・メンデスの映画に対する思いが、彼が半自伝的とする作品の中で、ちょっとロマンチスト過ぎる話の結びになっていたコトがとても嬉しかったです。