まずは脚本の良さですね。アガサ・クリスティを思わすミステリー作品で、しかしながらポワロのシリアスさというよりはコメディ寄りの作品。序盤の展開が長く、どうなることやらと思っていたら急展開で謎解き。それには少し呆気にとられてしまいましたが、そこは登場人物のキャラクターの深堀りがとても上手いと思います。ミステリー作品にしては登場人物が多いので、必要以上には言及されていないと思いきや、最後の全ての種明かしとともに細かいところまでが染みてくる。それこそ東野圭吾だったり伊坂幸太郎だったりを思わせる伏線の面白さがあります。

そして、その中で動き回るキャラクターの良さ。ダニエル・クレイグ演じる名探偵が、本当に名探偵なのかと思わせる展開ながら、やはり名探偵としての洞察力と落ち着きは様になっています。クリス・エヴァンスも、ザック・エフロンの『テッド・バンディ』のように、いかにも人の良さそうなアメリカの兄ちゃんとその裏に隠している本性の表現力は良かったですね。そしてヒロインに当たるアナ・デ・アルマスには不思議な魅力があって良いですね。クセの強い役をベテランの俳優たちが演じている中に放り込まれた、凡庸な善人という道化師の立ち回りながら、とても輝いていました。