母と観に行ったのですが、劇場を出たところで「釣瓶、上手いね」とハンカチを握りしめて一言語ったきり、作品について話すことはありませんでした。それがこの作品の全てなんだと思います。

もちろん、秀丸演じる笑福亭鶴瓶だけが素晴らしいのではなく、彼を取り巻く環境が素晴らしいからこそ、彼の演技が活きているのだと思います。死刑に失敗した死刑囚という存在してはいけない秀丸という人物を中心に、それぞれに問題を抱えながらもつましく生きていく世界観の構築がよく出来ているからこそ、なんだと。役者全てが特殊な設定を抱えて演じなければならないという、かなり難しいところを上手く演じているからこそ、病棟全体の雰囲気がよく出ていて、その中でやはり笑福亭鶴瓶が演じる秀丸という人間の重みのようなものが、作品の全てを集約している感じがします。