スパイク・リーの巧妙さを全身で浴びてきたような気分です。バディものによくある手法であるところの、展開のスリリングさとユーモラスな会話のバランスの中に、様々な映像を継ぎ接ぎして、チョットわかりにくさもあるとは思うのですが、それでも勢いの良さに任せて楽しめる作風。そしてラストに持ってきた映像の意味を考えると、爽快感のあるバディものだけではない彼の映画人としての表現の矜持とでも言いましょうか、そんなパワーを感じます。

作品には『風と共に去りぬ』や『國民の創生』の映像を使ってきたところは、私的には打たれました。どちらも映画としては素晴らしい作品ではありますが、ストーリーはどちらも人種差別を当たり前だと思い、それを剥奪された白人たちが描かれているところも共通しています。映画史において名を残す作品は昨年のアカデミー賞で浮き彫りにされた人種差別的とも言われる内容も批判しているようにも感じます。

人種差別をテーマにしていますが、私の感じたところで言えばアイデンティティの確立を感じさせるキャラクターの心の動きが描かれているのも素晴らしいと思います。主人公のロンも登場シーンでは本人はそれほど差別を受けているという意識が低かったように感じますが、署内での扱われ方やブラックパワー運動への潜入捜査、そしてKKKが射撃に興じる現場で自らの立場を改めて思い知らされていく。相棒のフリップもユダヤ人というコトを意識したことはなかったが、KKKの潜入でやはり自分の人種に対して意識せざるを得なくなっていく。ロンだけでなくフリップのこのキャラクター性はこの作品の肝なんだと思います。

事実を元にした作品なので当時の話、で終わらせるのではなく、しっかりと今に繋げてテーマを掘り下げて描かれる本作は、私個人の意見として『グリーンブック』よりも好みです。