邦題のミスリードがチョットひどいかな、と思えるところです。
作品はDVを扱った作品で、暴力に次ぐ暴力と観ていて辛く気分の悪くなる内容です。その中で主人公のジュリアンをタイトルにしたということは、彼の視点で話が展開していく、と思っていたのですが、実際は母や姉の視点も絡んでくるところが作品の良さであるところを考えると、タイトルは持っ考慮すべきところだったと思います。監督のインタビューでも原題には「戦争用語で、最後まで戦い抜く、刺したナイフを付け根まで押し込む」という意味があるそうです。確かにDVの被害者である元妻や子どもたちにしても、DVを行う元夫にしても最後まで戦い抜くという強い意志が見受けられ、それこそがこの作品の根底にある暗く恐ろしい力を感じさせます。
映像的にはホラー映画のテイストを感じるところがあり、迫り来る恐怖が様々な伏線を踏まえてラストに向けてジワジワと映像を支配していくようです。もちろん、父役のドゥニ・メノーシェのピリピリと張り詰めた異常な雰囲気を醸す演技も素晴らしいのですが、それにさらされるジュリアン役のトーマス・ジオリアの繊細な演技が素晴らしかったです。恐怖の支配から母を守ろうと必死になる様は本当に痛ましく、息苦しいほどです。