確かに今年一番のホラー作品、とも思います。この後に控える『来る』にも期待を寄せるところではありますが、この作品の表現力は過去のホラーの名作を取り入れつつもオリジナリティのあるテーマの追究を感じるところです。

 

この作品について語る時、ネタバレなしでは語れるものではないので、そこを承知の上で描いていきますが、まずはテーマ。

悪魔崇拝を軸に描かれる家族の違和感。これは日本のホラーやサスペンスなどでも描かれるところですが、悪魔崇拝が入ってくるところが余計に気味悪く感じるところです。そもそもは愛情のある家庭のはずなのに、掛け違えたボタンのような違和感を感じさせるグラハム一家。それが祖母の死と悪魔崇拝者たちの企みによって具現化され、その悪魔崇拝者たちに支配されていく過程はゾッとするところです。

そして散りばめられた伏線。冒頭、アリーの「誰一人知らない他人がたくさん集まってくれた」と葬儀のスピーチ。遠くから見知らぬ大人に手を振られるチャーリー。そもそも、チャーリーとは自殺したアリーの兄チャールズの愛称であり、男の子の名前というのも引っかかる。祖母が遺品の中から出てくる「これから恐ろしいことが起こるが、それも素晴らしい見返りのための犠牲」という手紙。その他にもピーターの授業内容や家に描かれている言葉、異臭等々。挙げるとキリがないほどに綿密に仕掛けられています。

この伏線こそが、おそらく死期を悟った祖母エレンと仲間の悪魔崇拝者たちの計画だったという展開が、グラハム一家を支配的に壊していく流れになっています。正直「今どき悪魔崇拝をテーマにホラーとは」と疑問というか違和感のようなものを感じるところでもあるのですが、見方を変えて見てみると、そこにあるのは家族の鎖のような引力のような、絆といえば聞こえは良いけれど、そこにある束縛感とも感じられる気味の悪い何かを感じます。それをホラー映画の言語によって解いて(説いて)いるような作品なのかと、鑑賞後に時間をおいてみて考えるところです。タイトルのHereditary…代々の、先天的な、遺伝的な、という言葉に繋がってくる。時代が変わろうが何があろうが、それは永遠と繰り返される人類の“何か”に対する人類の恐怖、のようなものでしょうか。