なんだろうなぁ。観ていてすぐに思ったのはヒッチコックのサイコホラーの演出。ヒッチコックの『サイコ』以降、お手本として使われ続けてきた基本的なスタイルを取りつつも、チョットずつ現代的と言うか、この作品らしさをそこここに埋め込んで色々なものを暗示しているのが面白いところです。主人公は都会に溢れるものから陰謀論を唱え、それを解くことで自分は何者かになれるという幻想を抱いている設定なので、そういった演出がとても作品にマッチしているといえます。

そしてシナリオ的というか、作品に漂う雰囲気から感じたのは江戸川乱歩の作風。それも初版に近いモノで、残念ながら今作では「三度の飯より探偵が好き」な男は出てきませんでしたので、モヤモヤとする感じでしょうか。ま、明智小五郎の登場自体も、話を終わらせる役割でしかなかったように思うので、どちらにしてもカタルシスが開放されるような感じではないのですが(笑) で、最後に登場してきたのが、私的には"愛国者たち"を彷彿とさせる組織だか個人だかで、それが主人公のサムが行き着いたところ。確かにある意味ではサムが妄想していた陰謀論がほぼほぼ当たっていたり、魂を食い物にする悪魔に打ち勝ったり、と表面上は勝利っぽいのですが、自宅に戻ってみると何も変わりはなく、むしろ窮地に立たされているのを目の当たりにさせられる。今までやってきたことの虚無感=夢もしくは幻想、つまりは現実逃避をし続けていただけなのかもしれません。頭でっかちになった人間の誇大妄想と現実とのギャップが描かれているのかな、とか感じるところで、身につまされる話です(笑)