ヨーロッパの国を跨ぐ高速鉄道タロスであった、ノンフィクションの事件をイーストウッドが映画化……にしてもこのアプローチは!というのが第一印象ですね。メインとなる事件の当事者をそのまま出演させ、事件のあった鉄道をロケでそのまま使用し、そしてほぼほぼ一発撮り、というハリウッド的ではない手法の面白さが作品の良さに出ているように思います。
映像や構成がとてもシンプルで分かりやすく定番の手法ながら、自然照明でほとんどを撮るというところではカメラマンの腕が光っていると思います。ストーリーも恐ろしくシンプル、というかヒーローの話だけれど面白味に欠けるとも言える。主人公のひとりであるスペンサーを中心に描いているのですが、彼の半生は数奇な人生ではなくミリオタで冴えない、どころか失敗や落第を繰り返すタイプの人間。それが成長して幼少期からの友人とヨーロッパ旅行でのシーンでも、今時の若者らしきスマホとインスタとバカ騒ぎの連続。
ただ、その中にもちゃんとココ、というテーマを描いているのがイーストウッド映画の面白さだと思います。「その時がきたとき、やるべきことをやる」ことこそが人生で大事なのであり、彼らが過去の英雄たちがそうであったのだ、というところをシッカリ描いています。スペンサーのボンクラ感を描いた大半がむしろ効いてくる。
最近のイーストウッドの作品はホントにシンプルになっていっていて、むしろ描いて観せたいテーマが浮き彫りになっているように思います。ストレスの少ない撮影手法もこれに一役買っていると思います。もう随分な年齢ですけれども、その老練な彼が今後も何を描いていこうとするのか、しっかりと見届けていきたいと思いますね。