カミンスキーの訃報でもって始まる本作、彼の死について知らされても死そのものについては何も語っていない。彼がどう生きてきたのか、それを探るように展開し、そして結末には……という感じでしょうか。
傲慢な野心に溢れるセバスティアンは常に都合のいい妄想にとりつかれているものの、カミンスキーとの旅を続けるに至り、それも減っていく。カミンスキーと対話で彼は自分の現実と見つめ合い、それを認めていく。
一方、カミンスキーの視点で語れば、彼は世界に何を残してきたのか。彼が彼の作品として残してきたものは、果たして画家としての作品なのか、“盲目の”画家としての作品なのか。
作品全体として、オープニングから彼らの別れのシーンまで、とても計算されているように感じます。自己の顕示欲を強く感じながらも、脆く危ういふたりが緻密に描かれ、エンディングのシーンのなんとも言えない切なさが、途中で語られる達磨大師の説話に溶かされていくような、そんな気分になりました。