今作のような、“1カメ長回し風”の作品を観ると思い出すのはヒッチコックの『ロープ』という作品。映画はフィルムのリールの制限を受けるので、当時はおよそ5分程度しか連続して撮影できなかった壁への挑戦であったところは大きいようです。しかしながら、昨今の“1カメ長回し風”は演出は連続して起こる事件のリアリティを表す手法のように思えます。時間を切り取らずに連続させることで、観ている者の実時間とリンクさせる手法ではあると思いますが、それによる制限、時間的飛躍が難しく矢継ぎ早に事件が起きないとストーリーの展開の妨げになってしまうとも考えられます。そういうところで、今作バードマンはセリフ回しや定点による遅回し(最近流行でいうところのタイムラプス的な演出)を施すことによって、適度に時間が流れストーリー展開がスムーズに心地よく(一瞬「あれ?」と思うことがあったりもするけれども)進んでいったように思います。
また、今作ではほぼドラムのみの音楽演出も印象的で、ストーリー展開とともにビートが体に浸透してくるのも印象的でした。印象的で判りやすい音楽ではなく、ジャズのドラムソロが登場人物の感情を表すように演出されるのが面白いと感じました。ドラムだけという制限ではなく、最良の選択といえるでしょう。

イニャリトゥのとても良く練られたクレバーな作品というのが第一印象ですが、全体的には主人公と彼を中心としたストーリーもとても秀逸です。ところどころ、シュールなジョークのような展開も見せるのが魅力的だとも思います。
とても細やかに寝られた脚本や演出が面白い作品でした。