とにかく、静謐。前作がミュージカル作品だったのと対照的に静かに物語が進行していくのは、その故に狂気が音になって聞こえてきそうな程に恐ろしく感じる出来でした。
クリス・カイルの射殺事件に関しては本当に残念に思うし、彼が「伝説の狙撃手」の狙撃手であることは確かだと思う。しかしながら、やはり彼は「ラマディの悪魔」であることには違いなく、人殺しなのでもある。戦争だから、というのは言い訳にもならないと思うし、だかからといってそれで彼を責める気にはならない。彼と話せたらきっと、こんなことを私は話したいんだと思う。戦争自体は否定しないんだけれども、近代戦争の在り方はもはや戦いではなく虐殺の歴史を辿ってきていると考えている。そういうことを彼のような戦場経験者と話して実際に意見を聞きたいと、そう感じた作品でした。

イーストウッド“監督”に対して「さすがだな」と思うところというのがこういうところで、ジャンルを問わずその作品に合った演出にムダがないというか、媚びるでもなく観客が観たいと思っている感情を見事に刺激してくれる。もちろん、多少のズレはあるだろうけれども、多くの“万人”にウケる作品を作ってくるところかと。しかし、そこで器用貧乏で終わるのではなく、シッカリと強い情熱が傾けられた、とくに今作のように静かな中に燃え上がる熱い炎のようなものを感じさせてくれる作品を作ってくれる、とても素晴らしい映画監督だと思います。