先日発表されたアメリカのアカデミー賞などにノミネートされ、各国で高い評価を受けている作品です。
観る前は「父と息子のロードムービーかな」と思っていたのですが、それともちょっと違う印象を受ける仕上がりでしたねぇ。ちょっと痴呆気味のウディとその二男のデヴィッド、そして彼らの家族である母と兄と。家族を繋ぐ不思議な絆はお互いに文句を言い合ったりはしても、強く結ばれているんだな、と感じる作品です。
そして、作品全体に漂うシュールというかシニカルというか、ゾワゾワとさせる何とも言えない空気感が、監督であるアレクサンダー・ペインの面白さかな、とも気が付きました。『ファミリー・ツリー』でも「なんだ、これ?」みたいに思うシーンがありましたし。

モノクロ作品、というとなかなかそれだけで敷居が高いというか、敬遠してしまうこともあるかもしれませんが、私はあの世界観が好きです。オーバーラップの滑らかさや、光の温かさ、闇の黒さ、そういった様々なものがとても美しく映像として仕上がってくると思うのです。
その柔らかさと田舎臭い古くささを狙ったのだったら、この作品がモノクロである理由は十分に達成され、魅力的な作品であると言えるでしょう。