手術室は二重扉になっており、
手前が受け付け。
奥が手術室です。

頭にシャンプーキャップみたいな
不織布のキャップをかぶり、髪の毛を全部入れ込みます。

本来、受付で履き物を履き替えて手術室へてくてくと
歩いていくのですが、
クロックスのレディースを履いてましたので
そのままでいいですよ、ということで。

手術室の扉を抜け、
さらに扉を抜け、舞台に登場します。

歯の手術ですので、
診察台に毛が生えた程度を予想してましたが、
予想を裏切って普通に手術室でした。

中央には手術台があり、
執刀医の先生が2名、
麻酔医の先生が1名、
あと看護師さんが2名か3名(ここはうろ覚えです)
待機してました。

おおおお、なんか本格的だよ。

まず、手術台に寝転がるように指示されまして、
はいはいと台に乗りました。

もちろん、靴は脱ぎますよ。
着脱しやすい履き物でない場合、
入り口で履き替える必要があるんですね。
そりゃそうですよねー、寝るとき、ベッドで
クロックスは履いてませんもんねえ。

歯科の診察台ぐらいの幅で、
寝心地は…案外悪くなかったです。
体の上に何か暖かい布団のようなものをかけられ、
手術室まで着く間に冷えてた体にはありがたかった。
手術につかう器具だから重いでしょう、と言われましたが…

いえいえ、暖かいからうれしかったですよー

とは言いませんでした。

言えばよかった。

ここでも生年月日と名前を口頭で確認します。

その間、周りはわさわさと動いてます。

室内はそこはかとなく音楽がかかり。

まあ! まるでTVドラマみたいだわ、
ホントにBGMかけるんだあ、と耳はそっちに釘付け。

けど…これ…

J-POPだよね?

えっと……エグザイル系ですか?

………どなたの趣味なんでしょう?

執刀医の先生は、お一方は40代ぐらい、
もうお一方はとっても若く、
20代ぐらいにしか見えません。

若先生の、趣味?

結構しょーもないことばかり考えている間も、
手術の準備はちゃくちゃくと進んでいきます。

心電図用の端子を着け、
すぐに電子音が、ぴっ、ぴっ、ぽーーーんと
一定の間隔で鳴ります。
これ、心音なのかなあ、
BGM…やっぱりエグザイル?

ホントに変なことばかり考えてました。

きょろきょろと周り見たかったけど
落ち着きなさそうに見られるのもなあ、
いい年したおばさんだし。
で、目を閉じていたんですが…

深刻な状況でなく手術台に乗るのは
おそらくこれが最初で最後。
よく見ておこう! と頭上を見上げました。

天井にはTVとかでよく見る照明灯が。
間近で見れる日がくるとは思わなかった。
けど、蓮のようなライトがついてるタイプではなく、
丸いライトが複数組み合わさった
お花のような形(キキカイカイみたいな)の
大きいライトが頭の上に。
同じ形をしてる小さいライトが足下の方に。
相互に照らしています。

黄色い明かりで…なんか暖かい感じだなあ…
ライトの一つ一つは、まるで昆虫の複眼のように
光が集まって見えます。

これをずーっと見つめてました。

で、麻酔医の先生がいらっしゃいまして、
一言二言話をしました。

麻酔医の先生に限らず、
病院内で接する医療従事者の皆さんは必ず聞きました、
薬にアレルギーはありますか、と。
この時も聞かれました。

私は抗生物質に深刻なアレルギーがあり、
摂取するとほぼ間違いなくアナフィラキシーショックを起こしまして
おそらくそのままお亡くなりになる可能性が高いので
医療機関にかかるときは絶対に申告するんですが…

いやいや、手術前のこの時に
「それ聞いてませんけど??」って言われると困るんだけどな、
何で、何度も同じ事聞くんだろう? とその時は思ったんですが…

今にして思い直すと、
患者に何か話させてコミュニケーションを取って
不安を取り除くためのトークなのかな、
もしくは患者の心理状態を返答で推測してるのかな、などと…

的外れてますかね、けど、そんな気がしてます。

で、これこれこの薬剤でアレルギー起こしました、とお伝えしました。

どんな症状が出ましたか、と聞かれましたので、
これこれこーいう症状で、緊急外来にかかって、
血液検査の結果が陽性で、注意するように指示されました、と。

そうですか、それは大変でしたね。
これから点滴する薬剤で抗生物質を使いますが、
その系統の薬は使いませんから安心して下さい、と。

はい、わっかりましたーとお答えし、点滴を打たれました。

ちくっとしますよーと、刺すときは毎回皆さんおっしゃいますよね。

…うおおお、痛いよ痛いよ、ここに入って初めて
針が刺さる施術で痛いって感じちゃったんだよー、
顔がさすがにあいたたとなってたと…思います…

先生ごめん。でもねえ。

場所が左手首の側面で、場所も手伝うんでしょうが…
いや、マジで痛かったのです…。
(今も跡が残ってます)

そしてすぐに「これから麻酔薬を入れますね」と言われ。

点滴の管を通して薬剤が投入されました。

はい、とお答えして真上を見上げ、
目の際がしゅわっと、
そうですねえ、貧血で意識が遠のく時、
目の周りから泡たつ感じで視界が真っ暗になる方の私。
あの感じの手前。
あ、貧血来る? という瞬間が来た? と思った次の瞬間。

時間にしてほぼ1,2秒もなかったような

「○○さん(私の名字)、終わりましたよー」

と声がかかり、心電図のモニター音がにぎやかな中、
もう手術は終わっていたんであります。

いや、ホントに1,2秒ですよ。

これが全身麻酔、意識がなくなるってことなんですね。


(この項、続きます)